お題:愛すべき螺旋 制限時間:15分 読者:367 人 文字数:605字
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溜息
「もう、兄貴のせいでまた振られた」
 その言葉を聞くために生きている。弟が女の子に振られるのはどうやら俺のせいらしい。通学カバンを下げながら不機嫌そうに言い放つ弟に俺がかけてやる言葉はない。俺達兄弟は本当に兄弟かと言われるほど似ていない。容姿も性格も好みも何一つ似たところがない。俺を表すならば非凡で、弟を表すなら非凡。そのくらい似ていない。いつも弟が好きになる女の子は俺のことが好きで、告白すればよくて「好きな人がいるから」、悪ければ「あなたよりお兄さんのほうが好きなの」と返ってくる。ならば俺に言えばよかろうと思うがそれは彼女らの事情なので俺にはどうすることもできない。だが俺は少なからず顔も名も知らない彼女らに感謝するばかりである。彼女らが弟を振るたびに弟は俺に泣きついてくるからだ。泣きつくという表現は正しくないが、叱られた犬のように尻尾を垂れて泣きそうな顔をしながら俺を責める弟をかわいくないと思う兄がいたならば俺の前に出てこいと叫びたい。お前のせいだと口ではいいながら慰めてほしいのは目に見えている。所詮兄が憎いよりも自分の傷のほうが痛いのである。なんと愚かで愛おしいのだろう!俺は弟が振られたと不機嫌を露に帰宅する瞬間が毎日楽しみで仕方がなかった。なんでもないように装ってはいても、俺を見た瞬間ぼろを出すのは見逃せない。
「もう、兄貴のせいで振られた」
 その言葉を聞くために俺は生きているのだ。
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