置くタイプのやつも――。
びしょ濡れなんてもんじゃなかった。
濡れる……というよりもう自分自身が水分になった気分。
ひたすら汚れた俺にとって久々のシャワーだ、なんて喜んだのは一瞬のこと。
ずっと霧状の水滴が俺に降りかかってくる。
もう、十分だ。十分すぎるほどシャワーは浴びた。
だけど、いやがらせのように霧が俺に降りかかる。
あんなに暑かったはずなのに。あんなに水分を欲していたはずなのに。
今はひたすらあのじりじりと焼けるような太陽が恋しかった。
なあ、もう十分だろ。
確かに汚れ続けて臭かったのは認める。
けどもう十分洗われただろ。俺。
こんな俺の声が届くはずもなく、霧はずっと俺に降り続けた。
「ちょっ! お前、それさすがにかけ過ぎだって! もうぐちゃぐちゃになってんじゃん。もうなんだかわからなくなってるって! もう帽子とかわかんないレベルになってるって」
「こんぐらいかけないとマジで匂いとれないんだって! たぶん、10試合くらいの汗がしみこんでるからな!」
「それにしても、かけすぎ……ってほらー。もうなくなったじゃんかよー。俺の分が……。ったく。おーい、一年! ファブリーズ買って来て!」
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