お題:赤い14歳 制限時間:1時間 読者:901 人 文字数:1232字

新年の未知との遭遇
 


 酷い酩酊状態だったと思う。だが笑わざる得なかったのも一つだ。

 何がお目出度いのかわからないが、ただ煙草を吸い酒を飲み、自我を崩落させるのは楽しかった。

 理解なんか求めてないだろう。みんなそうだ、自分もそうだ。



 ここまでは、いつもの思考だ。

 その先が、異変だった。



 知り合いが主宰の新年クラブイベントが閉幕し、スタッフでもない一般客の自分は外へ出た。この時期始発が動く時間も随分辺りはかなり暗く、とは言え街灯を頼りに、と言う程でもなく。同じイベント客がぞろぞろとぱらぱらと歩き出したとき。他の客が洩れ無く駅にまたは違う帰路に就いた最中。自分だけがそこから外れた。



 ……何だ、アレ。不意に脇の路地へ視線を滑らせた瞬間、ぴたりと足が止まってしまった。

 赤い。赤いナニカがゆらゆら動いている。幸い、赤いナニカはこちらの道とは反対方向へ進行しているのでその辺は良いのだが……いや、良くないか。こっち向いたら……どうなるんだろうか。



 みんなが淀みなく目的地まで歩き、内何人かの顔見知りが気付いて声を掛けて来る。適当に返しながらも自分は赤いナニカから目を逸らせない。そんな自分の様子に首を傾げるものの、知人たちも酔っているのか踊り疲れからか単に徹夜で眠いせいか特に自分に注視することも無く去って行った。

 赤いナニカは、この間も向こうへ進む。



 やはり自分は酔っていた。何も考えず、とっさに赤いナニカを追い掛けた。



 結論を言うと、赤いナニカは少女だった。
 赤いペンキ? 絵の具? に塗れたそれはそれは可愛らしい少女だった。

「好きな人が同性で、……もともと女の子になりたかったから」

 と思ったら少年だった。何これジーザス。

「女の子になりたかった、てのは違うかなー? 単に女の子みたいに可愛い格好して、女の子みたいに可愛がられたいんですよね」
「ほー……」

 凄い世の中になったもんだなぁなんて年寄り臭く考えた。うーん、難しい話だな。

「だから、て言うか、この格好で告白したんですけど……駄目でした」
 ああ、勿論玉砕は覚悟してたんですよ? 上手く行くなんて、有り得ないもの。……そう儚く笑う仕草や姿は生来の女より女の子らしかった。むーん、世知辛いなぁ。

「でもまさか、こんなものぶっ掛けられるとは思いませんでした」

 うふふ、と彼女……いや彼は笑う。楚々とした笑みはさみしそうだった。クリーニング掛かっちゃう取れるかしら? と言ちる彼に自然と胸ポケットを探った。名刺を探り出し渡す。

「これ、ウチの店。この近くだし────割安で請け負うよ」

 ぽかんとしつつも受け取った名刺を見て、やがて彼、や、彼女はさっきと違った種類の笑顔になった。



 後日服を持ってやって来た彼女の制服姿に、彼女が中学生で、更に胸の校章の色で中学二年生と知った。






   【Fin.】


 
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