お題:最後の馬鹿 制限時間:15分 読者:311 人 文字数:281字

最後の馬鹿
 片目をつぶった男は葬儀に遅れてやってきた。
 遅れてきたのにその男は悪びれる様子が一つもない。
 仏を前にしても涙を流すわけでも、悲しみをこらえるわけでもない。
 聞けば亡くなった男の師匠的存在であったという。
 普通、師匠というものは弟子が亡くなったら、無念で一杯になるところをこの男は何一つしゃべらない。
 ただ、丹丹と葬儀が進行されていくのを見ているだけだった。
 
 そのまま彼は何も言わず、とうとう出棺の時間になった。
 霊柩車が見えなくなるのを見送った後、猫背茶色い五分刈りの初老の男は自分の弟子に一言、こうつぶやいた。

「ダンカン……馬鹿野郎」
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