お題:去年の草 制限時間:15分 読者:49 人 文字数:788字

葉っぱばかり食べる理由もあるのです
 よくそんなに葉っぱばかり食べるね、と眼の前の彼が笑いながら言う。そう言ってからビールのジョッキを傾けるその喉元を、ぼんやりと見つめる。
 口の中に詰め込んだサラダを咀嚼する。ぱきぱきと細胞壁を破壊する音がして、合間からドレッシングの塩気が覗く。青い香りが口いっぱいに広がって、おいしい。それらを全部飲み込んでから。
「そんなに変かな?」
 と返して、私はまたサラダを頬張った。
 つまむ程度にしかサラダを確保していない彼のお皿。ビールの合間に小さくかじる程度しか食べていなくて、これから来る料理を待っているみたいだった。
「変ってこともないけど……いやでもやっぱり変わってるかな。ずっとサラダ食べてる人って、珍しいと思うよ」
 ふうんそうなんだ、と思いながら、それでも自分の欲望を逸らそうとは思わない。お肉よりもお魚よりも、私は植物が食べたい。
 大きなお皿に乗っていても、嵩の大きい生の野菜はすぐになくなってしまう。そこに残ったドレッシングを舐めるわけにもいかないから、メニューを手に取った。
 うーん、そうだな。次は葉っぱだけにならないように、このカリカリベーコンのサラダというやつにしよう。
 すいませーん、と店員さんを呼び止めて、メニューを指差す。ついでに彼は二杯目のビールを注文する。空になったお皿も下げてもらう。
「またサラダ食べるんだ」
 と言って、彼はさっきよりもはっきりと可笑しそうに笑う。
 あんまり言及されるとちょっと恥ずかしくなる。けれど自分の欲しい物を偽りたくもない。
「好きなの」
 と返答して、汗をかいたグラスから一口水を飲む。 

 サラダばっかり、野菜ばっかり、葉っぱばかり食べるね。と言われても。
 あなたは知らないし、言っても信じてはくれないと思うけれども。
 仕方がないでしょう?
 だって私、ちょうど一年前までは牛だったんだもの。
作者にコメント

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