お題:殺された希望 制限時間:15分 読者:28 人 文字数:1256字

蝶はざわめき風を起こす
自我の分離。

それは、あってはならない事象。

身体の中に一つの椅子しか存在しないように、贋作が贋作であるように。

この世界に正しきものは一つしか存在してはいけない。

もしも、本物が二つ存在してしまったら、世界は片方を弾く。

遠い次元の向こうの世界へ。

それを、僕らは4次元と呼び、次元の壁と称する。

もう一人の僕に手を伸ばすことは容易ではないから。

この世界には、未来が分岐したAの僕とBの僕が同時に存在することはない。

AにはAの世界が、BにはBの世界があるからだ。

それらは決して交わることはなく、互いに別の道を歩んでいる。

だから、その時点でAの世界にとってBの世界の僕は僕ではない別の存在へと昇華する。

それが虚数解の果てにある存在だとしても、無いことが有るとして、世界はその存在を認識する。

だからこそ、僕が今迫られている選択は、未来を問われる話だ。

僕が死ねば、彼女が助かる。

彼女が死ねば、僕は助かる。

どちらか一つしかない世界。

それが、この世界の分岐点。

AかBか、二つに一つしか存在しない。

何故なら、Aの世界で生き残った僕と、Bの世界で生き残った彼女が邂逅しても、そこにあった繋がりは隔たれているのだから。

死という強固な運命の鎖が僕と彼女を紡いでいたからこそ、僕は彼女と出会うことができた。

裏を返せば、死という運命が無かったら、僕と彼女は出会うことすらなかったのかもしれない。

Cの世界の僕は彼女とすれ違っているかもしれないし、Dの世界の僕は、彼女と出会ってすらいないかもしれない。

CとDの世界の僕は、きっと運命を超えた、あるいは運命に導かれていない存在だ。

そこに僕が僕たり得る認識は無い。

あくまでも、僕の姿をした、僕と近い僕では無い存在なのだから。

だから、例え悪魔に助かると手を伸ばされようと、僕は手を取ることを拒否する。

死があったからこそ、彼女と出会うことができた。

未来の経験があるからこそ、今ここにいる僕の自我は僕を僕と認識する。

時間遡行があれば、そう願った時も確かにあった。

彼女を助けること。

それは僕にとっての最適解かもしれない。

だけど、命を犠牲にしてまで助けたいかと言われて、僕は躊躇した。

この先の未来で、彼女の礎を背負って生きていくか、それとも未来を諦めるか。

もしも、僕が自己犠牲に長けていれば、迷わず切り捨てただろう。

僕の命で彼女を救って欲しいと。

だが、現実が非情であるように、利己的な僕は、彼女の死を一瞬でも願ってしまった。

僕が死なないために、彼女に犠牲になって欲しいと。

最低で最悪だと、僕も思う。

それでも、Aの僕…今の僕が生きると決めたことには、必ず意味がある。

たとえその答えが、死ぬ間際まで見出せなかったとしても。

今を生きていることに対して、喜びを隠せいないのだから。

そう、だから。

Bの世界の彼女が目の前に現れたとしても、僕は………。

作者にコメント

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