お題:天国の雨 制限時間:15分 読者:27 人 文字数:869字

知ること。
「どんな場所でも、悲劇はあるってことかい?」
「多分、ね」
 愛していた人に裏切られて、絶望して、全てを恨むようになる。そうして起るのは、ありとあらゆる愛の否定。特に、面白半分にここにやってきた男女のカップル相手ならば、その悪意は途轍もないものを発揮するだろう。
「可哀想だよなあ。ただ好きだっただけなのにさ。好きだったのに殺されて、呪いになって、さらに嫌われる」
「それでも、逆恨みで暴れられちゃあやってけないよ」
「へえ。元悪の魔道士さんらしくもない」
「アタシは悪者だったから言うんだよ。アタシだったら、そんな男を返り討ちにしてやったのに」
 過去に遡ってその男ぶっ飛ばしに行っちまいたいよと、カーメラはどこか悲しさを込めたように言葉を綴っていた。
「生きていたら、俺と同じくらいかな」
 十二年前に起きた女子高生の非業の死。事故として片付けられてしまったその酷い話は、誰も真実を知らずに、今の今まで新たなる悪意として受け入れられていた。
「俺は、幸せだったんだな」
 あの頃は家族もいた。友達もそれなりにいた、彼女もいた。今もそうだ。多くの仲間と一緒に毎日をすごして、ヒマな日にはこうして遠出することだって出来る余裕があった。
 もしかしたら、彼女だって自分と出会っていたかもしれない。自分の隣にいたかもしれない。もちろんほとんど有り得ない話だ、住んでいる場所も境遇もなにもかも、違うのだから。だけど、紳慈はそう考えてしまう。
「あんまり思い詰めるんじゃないよ」
 カーメラは悪意の残骸があった場所を見つめ、そして手と手を合わせて目を瞑る。紳慈も合わせて、手を合わせて黙祷する。あの悪意が朽ちる直前に見せてくれた、幸せに満ちていた彼女の顔を思いだしながら。
「……振ってきたね」
 ポタポタと、雨が降ってきた。テレビでやっていた天気予報では降水確率はゼロパーセントであったはずのに、山の天気は変わりやすいとは言えないほどの、大粒の雨が降り注いだ。
「覚えておかなくちゃな」
「そう、だね」
 ここに、幸せな少女が眠っていることを。
作者にコメント

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