お題:トカゲの彼女 制限時間:15分 読者:12 人 文字数:630字

トカゲ
 いとこは状況がマズくなると、するりと尻尾だけ切って逃げる。たとえばグループ内で雰囲気が悪くなり、いよいよもって何かはちきれそうだというときになると、彼女は決まってその場にいなかった。
 同じ学校だった。合唱部の練習について、口論になったことがある。彼女だけは、かわりに白い、ドットプリントの入ったシュシュをほどいて机の上に置いてその場にはいなかった。
 要領が良いというわけではない。そのことでずいぶん周囲は彼女と距離を置いていた。
 その彼女が夫とたった1ヶ月で別れたのはもう11年も前のことだ。おっとりして見えるから、その電光石火の早業はやはり周囲を驚かせたように思う。
 取り立てて問題のないように思えた夫は次の結婚で、配偶者に暴力を振るったらしい。偶然かもしれない。
 彼女のことを思い出したのはもうずいぶん久しぶりのことで、小さな地震があって、そのことについて話していたら、嵐の前に船から逃げ出すネズミの話になった。
 仕事をやめて田舎にやってきた私はふと彼女の姿を思い出した。どっちかといえば逃げ出すネズミをひょいひょいとくわえて順番に飲み込む姿だ。
 久々に顔を合わせた彼女がぺこりとよそよそしく礼をして引っ込んでいった。
「あの、なんかした?」
「いや、別に」
 とりあえず、私は嵐に取り残されようとしているようだ。彼女はちょっと疲れた顔をして、私にヘアピンをよこした。トカゲのしっぽは、慰めになるんだろうか。とりあえず船が沈むとは限らない。
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