お題:消えた弔い 必須要素:ゲロ 制限時間:15分 読者:22 人 文字数:638字
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路地裏の与太話
煙草の吸殻が無数に落ちた路地裏で、恋人にサヨナラを言う綺麗な人に目を奪われた。

あれほど綺麗な瞳で、綺麗な声で
あれほど完璧な「会えて良かった」を聞くことはもう二度とないだろう。

路地裏は良い。
幾重にも監視されたインターネットの中よりも、よほどプライベートな空間だ。

ここは、どこかに入ることには何らかの理由があってできない人が、個室を求める時にやってくる。

喫煙所が世の中から減った今、紫煙に包まれることが多いがそれ以外にもこうして客が訪れることはたびたびある。

そういえば、目の前に転がっている缶チューハイの潰れた空き缶も珍客を思い出させる。

一昨日の大雨の中、1人の酔っ払いがゲロまみれになりながら、路地のゴミ袋を敷布団に変えていた。
眼前の男を冷めた目で見ていると、雨を弾く音を立てながら暗い傘を差した女がやってきた。

「あなたはユウちゃんに似ているわ」

ポツリと呟くと、女は雨音でかき消さないほどの大声で泣いた。
その姿をしばらく黙って見ていると女は泣きやみ、こっちをじっと見つめ返した。

「あなたに会えてようやく実感してしまったの。本当にいなくなってしまったことを今日まで信じられなかったのね」

死んだモノと比べられることはこれで数度だが、この女は随分長いことその場にいたので記憶してしまった。

「新しい人生、なんだものね」

女はそう呟くと傘を置いてずぶ濡れで去っていった。




いびきをかいた酔っ払いの横で、小さくにゃあと欠伸した。
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