お題:純粋な夢 制限時間:30分 読者:19 人 文字数:979字

夢屋 ※未完
 日曜昼下がり。夏の日差しはインドアな人間にはとても辛く、やることも無く散歩に出たことを後悔しかけた時だった。
「ちょっと、お兄さん」
 甲高くて、それでいて重厚感のある声が僕の鼓膜を震わせた。声のする方向に視線をやると、この公園の中でもひときわ目立たない位置にちょこんと置かれたベンチに、なにやら胡散臭い占い師のような人間が背中を丸めて座っていた。人間、と言ったのは、この暑いのに何故か真っ黒なローブで体全体を覆っていて、シルエットが不明瞭だったのと、目元以外、顔が黒子の頭巾のようなもので隠されていたからだ。なんとなく、占い師の衣装を着たパペットマペットを想像してくれれば良いと思う。
 僕の視線に気がつくと、占い師は再び
「お兄さん」とその独特な声を発し、僕に向かって手招きをした。本の一瞬、僕の中では警戒心と好奇心が戦争を始めたが、退屈という名の砲弾に正常な判断力の防壁は何の意味も成さず、瞬く間に陥落した。
 僕が占い師のそばによると、占い師は手招きしていた手をそのままベンチへ置き、座るように動かしてきた。促されるままにベンチへ腰掛けると、占い師はささやくように話し始めた。
「暑いでしょう?今日は本当に暑い。こんな日は夜まで暑くて寝苦しいですよねぇ」
「ええ、まあ」
「でしたら、熟睡も出来ていないでしょう」
「眠りはまあ、浅いですね」
 流されるように答える僕だったが、占い師は大変満足したといった風にそうでしょうとも。とうなずく。
「ところでお兄さん、夢、ってなんで見るか、ご存じで?」
 唐突な質問に、僕は答えかねる。沈黙を否定と受け取ったのか、勝手に話を続ける。
「夢というのは、その日にあった出来事や新たに覚えた物事、記憶なんかの定着と整理のために見るものでしてねえ。深い眠りの際に見ているものだと思いきや、夢を見ている間は脳がせっせと頭の中を掃除しているから、実は浅い眠りの時にしか見ることが出来ませんのです」
「はぁ」
「この深い眠り浅い眠りをレムだのノンレムだの言いますけれどね、そんなのはどうだっていいんですよ」
 さっきからこの占い師は何を話しているのだろうか?内容の猥雑さと直射日光の熱射で頭がぼうっとしてきた。
「もし、見たい夢が見れるとしたらどうなさいますか?そして、自らの記憶の中を、自由に行き来出来るとしたら?」
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