お題:たった一つの悪魔 制限時間:15分 読者:15 人 文字数:1242字

天使と悪魔の置物
 棚の上に置かれていたのは、10体ほどの白い置物だった。いずれもカールした髪で鳥の羽を背中にはやした男の子の姿をしていて、表情は柔和だ。手にはラッパや小さな弦楽器を持ち、楽団のようにも見える。
「ここに、12体の天使と1体の悪魔が並んでいます」
 置物を売る雑貨屋の店主は、棚を眺めるわたしの背後からそう声をかけてきた。
「これらには本当に天使と悪魔が宿っており、天使を買ったものには幸運がもたらされますが、悪魔を手にしたものには恐ろしいことが起こると言われています。天使が自分の持ち主にもたらした幸運の分、悪魔の所有者は不幸になるのだとか……」
 あの、とわたしは店主に尋ねる。卵のような頭で、びっしりひげを生やした店主は細いフレームの眼鏡をずり上げて、「はい?」と聞き返す。
「12体って、これ数えたら8体しかいないんですけど……」
 ふむ、と店主はうなずき、置物を「にのしのごの……」と指さし数える。
「……ここに7体の天使と1体の悪魔が並んでいます」
 何事もなかったかのように言い直した。
「ほかの5体はどうしたんですか?」
「売れました。実際は13体一組なのです。なのでついつい昔の口上を言ってしまうのです」
 それはともかく、と店主は咳払いをする。
「買われますかな?」
「……売れた5体の中に、悪魔はいなかったんですか?」
 店主は特にずり落ちてもいない眼鏡を直すしぐさをした。どういう意味のジェスチャーなのか、わたしはとらえあぐねる。
「あの、この中に悪魔、混じってるんですか?」
「……わかりません」
 店主はうつむいて応じた。
「買われたお客様の中に、悪魔が混じっていたかもしれません。それは最初に買われたお客様だったかもしれないし、昨日買っていったお客様かもしれません。あるいは、今この棚の上に残っているのかも……」
「売っているあなたにも、判別できないんですか?」
「残念ながら……。というか、判別できたとしたら、店に出すのはそのたった一つの悪魔だけにしますな、ハハハハハ」
 文字通りの悪魔的発想を述べ、店主は笑った。こっちの方がよっぽど悪魔だ。
「わたし、悪魔を判別する方法知ってるんですよ」
「おやおや」
 店主はわたしの顔を見た。真剣なまなざしだった。
「その方法、ぜひご教授願いたい」
「で、悪魔を見つけてどうするんです?」
「売ります。天使だけ引き上げます」
 いっそすがすがしい、と思ったので教えてやることにした。
「魚の胆汁をいぶすと、悪魔は嫌がるんです。これは聖書にも載っている伝統的な方法です」
「それは……臭いにおいがしそうですね」
 店主は店の中を見回す。趣味人が開いた個人経営の雑貨屋らしく、たくさんの品物がほかにも並んでいる。商品へのダメージを考えれば、おいそれとできない方法だ。
「だけど、試してみましょう」
 バルサンで。店主は奥からその殺虫剤を持ってきたのだった。
 結果、天使などおらず、残る8体がすべてあくまだというこt
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