お題:12月のセリフ 制限時間:30分 読者:16 人 文字数:518字

記憶
 君からの呼びかけに答えなくなってから、どれだけの時間が経っただろう。

 夜、夏の雨音を聞きながら暗い自室で目を閉じる。職場では無心で仕事をし、家に帰ってからも心をからにしたいがため仕事をする。

 そうしてその日その日をやり過ごし、目を閉じる前に祈るのだ。どうか明日は、彼女のことを忘れられていますように、と。

 人間は忘れる生き物だという。怪我の痛み、恥じるべき失態、そして誰かと過ごした幸せな時間すらも。人は忘れることができるのだという。

 けれど僕のなかに残った記憶は、どうにも消えてくれなかった。

 楽しそうに笑う声。好きという言葉。あなたがいれば他には何もいらないと、確かにそう告げられた夜。

 それら全てが嘘と知り、何度も忘れようとした。何かに没頭すれば忘れられるのではないかと思い、ひたすらに仕事を続けてきた。

 だが、無駄だった。彼女の全てが鮮明に、僕の脳裏に焼きついていた。

 そうして今夜も僕はあがいている。何も考えないようにしながら、目を閉じている。けれど――。

 ――愛してる。

 ふとした瞬間に蘇る嘘の言葉が。出会ってから初めて雪が降った12月のセリフが、今日も僕の心を縛りつけるのだった。
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