お題:贖罪の旅行 制限時間:15分 読者:31 人 文字数:980字

潰れた悲鳴
背中から一筋の赤い雫が零れ落ちる。

それは、先程までは無かったもの。

力の代償として身に受けた罰。

「ごほっ…」

手で口を抑え、液体を受け止める。

(…最悪だ)

どうやら、罰は身体中を侵食しているようだ。

(…あとどれくらい、もつだろうか)

心の中で小さく呟く。

まだ、倒れるわけにはいかない。

この身に宿した罰を浄化するまでは。

身体を起こし、前を見据える。

ふと、身体になにかが当たった。

(雨…か)

雨は身体に当たり、ポツポツと音を立てる。

(早く…影に隠れないと…)

近くに落ちていた木を杖の代わりにして、歩みを進める。

建物の影に入ると、ばーっという音を立てて雨が降り注いだ。

「…はぁ」

ため息をつき、壁にもたれかかる。

背中から流れていた血はいつのまにか止まっていた。

それでも、口の中で充満する鉄の味は消えることがない。

「…ぺっ」

唾と共に血を出す。

血はすぐさま黒くなり、凝固する。

(…いつまで背負えば、罪は消えるのだろうか)

それは一生かもしれないし、明日かもしれない。

けれど、不確定な未来を見る力がないから、答えはわからない。

「はぁ…はぁ……」

なんだか、身体が熱い気がする。

床に倒れ込み、目の前を見据える。

跳ねる雨が身体を濡らしていく。

(…こんな…ところで……)

意識が朦朧としてきた。

もしかして、このままこうしていれば、罪が消えるのだろうか。

ここで、旅が終わるのだろうか。

(…それも、いいかもしれない)

心が揺れる。

もう充分頑張った。

だから、このままここで朽ちることを誰も責めないはずだ。

(…あぁ、でも)

それでも、胸の内の炎は未だ燻っている。

まだお前の罪は赦されていないのだと。

こんなところで野垂れ死ぬ程、お前は何かを成したのかと問いかけられる。

過去の自分から、今の自分へ。

(…そうだ)

まだ、ここで死ぬわけにはいかない。

彼の罪を背負ったのは、私だから。

「うっ…!」

右腕を地面につけて、身体を起こす。

「……ふふっ」

不意に笑いが込み上げてきた。

何もおかしいことはないのに。

ただ、虚空へ向けて笑顔を向ける。

きっと、そこに何かがいると思っているのだろう。

罪の形が…。




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