お題:燃える超能力 制限時間:15分 読者:31 人 文字数:1391字

レッドボーイの怪異 7
 元警察官だ、と名乗ったその男は、玄関先で膝から崩れた大地ミヨコを抱きかかえ、「ともかく」と家の中に運んだ。
「すみません……、本当に……」
「いえ、こちらこそ、急に訪ねてしまって……」
 食卓で差し向ったミヨコは、改めて男に来意を尋ねる。
「その……、それで本当なんですか? うちの子が、あの事件について書いていたなんて……」
「ええ、そうです。そしてそれは、世間を騒がせている連続刺殺事件と関係がある……」
 男は断言したが、世間ではその「刺殺事件」が連続しているものとは考えられていなかった。
 少し前に海岸に打ち上げられた女子高生の死体、その女子高生が視聴していたユーチューバーの男、そして今朝この大地家の近隣で自室で寝ているところを滅多刺しにされた女子高生……。
 ミヨコの娘は、その女子高生のニュースを見てショックを受け、今は自室で休んでいる。
 その際、うわごとのように「レッドボーイ」や「殺人鬼」といった言葉を並べ立てていた。
 「レッドボーイ」の方は定かではないが、「殺人鬼」という言葉はミヨコの記憶の忘れがたい場所にある記憶と結びついてくる。
 そして、それが確固たる結束となったのが、男の見せてきた娘のSNSでの書き込みだった。
 「ジョギングおじさん」と呼ばれた男の起こした小学生男児だけを狙った通り魔殺人。10年ほど前に起きた、たった数十分で12人もの命が奪われた事件だ。
「しかし、大地さんは、何故そんなにショックを?」
 娘が刺殺体が見つかる事件と「かかわりがある」と見知らぬ男から言われただけでは、崩れ落ちるほどのショックは受けないだろう、とその男本人も考えているようだ。
 確かにそうだ、とミヨコは内心でうなずく。もし、あの「ジョギングおじさん」と自分たちが、何のかかわりもなければ、こんな男家の中にさえ入れていないだろう。
「実は、その『ジョギングおじさん』は……」
 わたしの前の主人です。
 男は「……あっ!」と気付いた様子だった。男は元警察官、それも事件が起きた地区の派出所に勤務していたのだ。事件の際、すでにミヨコが離婚していたとはいえ、それよりも以前に何度か見かけた顔だと思い当たったのだろうか。
「では、娘さんは……」
「はい。あの人の子です……。だけど、あの子は自分が『ジョギングおじさん』の子どもだとは知らないはずです。わたしから伝えたこともありませんし……」
 父親は病気で死んだと言ってある。ミヨコの今の夫によくなついているし、波風を立てたくないと考えて、何も伝えていなかった。すでに「ジョギングおじさん」は死刑になっているのだから。
「なるほど……。これはますます偶然とは思えない……」
 難しい顔をする男に、ミヨコは「あの……」と問いかける。
「『レッドボーイ』という言葉に聞き覚えはありますか? 娘が殺人鬼と並んで口走っていたのですが……」
 男は眉を寄せる。「どこかで聞いたような」と首を傾げた時だった。
 二階のミヨコの娘の部屋からけたたましい悲鳴が聞こえた。
 はじかれたようにミヨコは立ち上がり、階段を駆け上がる。男もそのあとに続いた。
「……!」
 ドアをあけ放ち、ミヨコは声にならない悲鳴を上げた。
 ベッドに横たわっていた娘の体に、ざくりざくりと見えないナイフが突き刺さり、穴をあけ血を噴出させていたのだ。
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