お題:箱の中の過ち 必須要素:パン 制限時間:1時間 読者:27 人 文字数:2173字 評価:0人

言ったら断頭台行
和室のなんていうのか知らないけども、ちょっと高くなっている場所がある。あの巻物とか垂らしておく場所、で、生け花とか、置物とか置いておく場所、あそこ。なんで高くなってるのかは知らない。そういう鑑賞用のものを飾る場所なのかもしれないし、構造上そういう風にしたのか、なったのか、全然知らないけども、とにかくそこに箱があった。

「・・・失礼しまーす」
その部屋に案内されて、待たされることになった。和室だ。習字教室か?と内心で思ったが、もちろんそんなことは言わない。和室ってだけで習字教室か!って突っ込んだらお里が知れるような気がした。子供のころ習字教室に行ってたんですね?って言われて、あ、そうなんですっていう会話が発展して、私はひとつ自分の内部をさらしてしまう。相手なんかは私パネルクイズの一つをめくってマウントをとったような気になるかもしれない。

「・・・まあ、別にいいんだけども」
でもまだそういうタイミングとは違うような気がする。多分。それにそう思うなら、裏千家か?とか、お花をどうにかするやつか!とかそういうことを言えばいいんだけども、とっさに出てくるのは結局過去に通過したやつなんだよなあ。それにもうそういうことをいうタイミングも過ぎてしまっていた。今はもう誰もいないし。

「・・・」
和室であり入ってきた側はふすまであったが、窓側は障子であった。おそらくその障子を開けると庭らしきものが見えるはずであった。庭。どういう庭なんだろうか?見たい。障子を開けてみようかと思う反面、和室で待たされている人間が勝手にそんなこといいんだろうか?開けてみてもいいんだろうかという思いもある。

和室をもつ人間の大半は、何かしらそこにこだわりというか、なんかの狙いがあるように思う。その意図から外れる行為を嫌うようなそういう部分があると思う。この部屋にやってきて、客人とも言えないような雑味100%の奴が遠慮もなく障子を開けて庭を見ていると、嫌な気持ちになるかもしれない。

あとで紹介という名の自慢をする手はずだったのに。と

「ちゅぱちゅぱ」
折衷案として、聞き手の人差し指を口内に含み唾液で湿らせて、十二分に湿らせてその指を障子に突っ込むことに決めた。
「ちゅぱ・・・ずぞぞぞぞ」
もちろん真ん中に□の、スクウェアの真ん中に突っ込むのではない。木枠のギリのところに突っ込む。ギリギリのところに。
「ばりっ」
突っ込むとき音がした。思わずあたりを伺った。張りのある、まるで十代のころから美容に気を使っていて、美容クリームやらパックやらを使っていた人の肌のように張りのある障子であった。きっと障子を張るとき、張り替える時も気を使っているに違いない。あるいは業者にやってもらっているのかもしれない。ばりっと音がするほどの張り。ドモホルンリンクルのしみ込んだ肌。あるいはシャウエッセンのソーセージのような張り。

そこから、開いてしまった穴から片目で覗いてみるが、窓が結露していてよく見えなかった。庭らしきもののモザイクみたいな、すかしみたいなものは見えたがいかんせんよく見えない。池らしきものや蘇鉄の植物らしきものが見えるが、どうにもうまくいかない。しかし若干の興奮はあった。覗くという行為がそう感じさせるのかもしれない。

「ええいままよ」
と、穴を広げてしまおうかとも思ったが、やめておいた。本能のままに行動する場所ではない。私の家ではない。

それにしても、来ない。

障子から離れて、和室を眺めまわす。梁とか天井の木目とか、畳の緑の具合とか、ふすまの柄とか、そして箱。

一段高いところに置いてあるのは木の箱であった。木箱。なにが入っているんだろうか?

普通に考えたら、何かしらの茶器か。鑑定団とかに出したらすごい値のつく茶器か?唐のころの茶器とかそういうのだろうか?唐津のなんかとか、なんか件の番組ではよくそういう単語を聞いたことがある気がする。しかし私自身それに興味がない。それは周囲にも公言している。
「へえー、そうなんですかー(棒)」
ってなるだけだ。だから私を待たせている人が、それを私に自慢するとは思えない。その人だって私のそういう部分は知ってくれているはずだ。もちろん、それでも自慢するという可能性はある。自慢したい人にはそういうところがある。だから最初に全力で興味ないということを伝えなくてはいけない。私はそれに全力を出してきた。

「・・・」
だとしたらその箱には何が?

開ける?

気が付くと、膝立ちで箱に接近していた。

「まてまてまて」
これ以上の粗相をするわけにはいかん。

それに箱の中に何が入っているのか知ったら怖い話になるかもしれないぞ。

例えば、今の私のこの姿が箱の中に再現されているかもしれない。

そうなったらこの話はホラーエンドになるじゃないか。

「ダメだよ!」
声に出して、自分を止めようとしたが、しかし気が付くと開けてた。

箱の中にはケーキが入っていた。代官山とか、白金台とかで売ってそうな、ケーキが何切れか。

「・・・」
気が付くと食べてた。

食べ終わってから焦って、自分が持ってきたパンを入れた。

ケーキがないなら、パンをいれたらいいじゃない。

っていう言葉が浮かんできた。
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