お題:団地妻のダンス 制限時間:30分 読者:7 人 文字数:1067字

ぼくの妻は踊り手さんだった
「最近、なんかあった?」
終電で帰宅した夫の食器を片づけている妻の後ろ姿に問いかける。

「なんかってなに?」
洗い物の手を休めずに妻がそっけなく質問を質問で返す。

二人の間に沈黙が流れる。

パジャマに着替えてコーヒーを飲みながら、なんとなく妻の後ろ姿を眺めていたら気が付いてしまったのだ。
なんか、腰細くなってない?
あれ?そういえば気のせいかもしれないけれど、足首もふくらはぎも前に洗面所で見たときより細くっていうか引き締まっているっていうか。

なんか、そう。そうなのだ。
なんか違うのだ、以前の妻の体と今の妻の体の輪郭が。
こう、ぽっちゃりとしたというか、だらしないというか、なんかだるんとしていた肉が最近健康的に引き締まって見えるのだ。
病気とかストレスとかダイエットとかそういったことでやせ細っているような心配になるような細さではないから、今日のようにじっくりと観察していないと気が付かないような小さな小さな変化だったから、今まで口にできなかったのだ。

だが、今確信した。

妻の身体に何らかの変化が起きている。

なんだ。一体なにがあったんだ。

洗い物が終わった妻は居間で洗濯物を畳み始めた。
手元をじっと見つめていると、妻に睨まれてしまった。
私は仕方なく、椅子から立ち上りコーヒーを飲み終わったマグカップを手早く洗うと洗濯物畳みのお手伝いに加わった。
黙々と服の山を片づけていると、ふと見慣れない衣類に目が留まった。

私の物ではないから妻の物だろう。
だが、スポーツが得意でない妻がスポーツウェアなど持っているはずがない。
だが、妻の身体は健康的に引き締まっている。
理由はこれか、と一人納得した。
友人と一緒かあるいは一人でジムとかヨガとかなんらかの運動に参加しているのだろう。
家にずっと籠っていると気が滅入ると聞くし、運動ならリフレッシュになって健康にいいだろうしわざわざ私に最近運動始めてみたの、とかわざわざ言うことないだろうしな、と想像した。

「なんか、その、運動とか始めてみたのかなって思って。」

と、洗濯物の山の中から見つけたスポーツウェアを指さしながら妻に再度聞いてみる。

「ああ。」

と、妻がそれをひょいと持ち上げる。
女性ものの軽い素材でできた薄いウェアだった。

「最近ね、踊ってみたってのにハマってて。」

と、妻が答えた。

「アーティストとか歌手のバックダンサーみたいな、あれのアマチュアみたいな?かっこいいのとかネットにあがっているのを真似して練習しているのよ。」

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