お題:メジャーな本 制限時間:15分 読者:22 人 文字数:1377字

俺と後輩のメタメタ
「この本はとてもメジャーな本なんですよ」
 そう言って後輩が持ってきた本は、聞いたことのないタイトルだった。
「『星屑の物語』……。作者は、……誰?」
「知らないんですか? 『星屑の物語』というメジャーな本を書いた人ですよ」
 何だその説明、マトリョーシカかな?
「本当にメジャーなのか? お前、適当言ってない?」
「メジャーですよ! だってほら……」
 後輩はその本の背表紙の上、印刷用語的には「花ぎれ」と呼ばれている部分に指を入れた。そしてそこからスチールの帯のようなものを引っ張り出す。
 帯には目盛りが書かれていた。これは、まさしく……!
「巻尺、メジャーか!」
 これは一本取られた。俺は額をぴしゃりと叩く。後輩は屈託なく笑った。


「……という小話を考えたんですけど、どうですか?」
 後輩の一人芝居に、俺は「うーん」と腕組みをしながら唸る。
「いささか唐突すぎないか?」
「唐突さで可笑しみを醸し出すタイプの話ですよ」
「いや、それでもだよ」
 例えば、と俺は真面目に論評してやる。
「『星屑の物語』ってタイトルなんだろ、そのメジャーな本は」
 そこがよくない、と俺は断言した。
「そこに巻尺の伏線が必要だよな」
「ほうほう」
「巻尺を思わせるようなタイトルならば、オチにも効いて来るんじゃないかな?」
 流石は先輩、と後輩は小さく拍手をした。
「いや、先輩に相談してよかったですよー」
「そこまで喜んでもらえると、少し照れるな」
 ハハハハ、と照れを笑ってごまかす俺に、後輩は「ところで……」と続けた。
「巻尺を思わせるタイトル、とはいかなるものなのです?」
「……え?」
「巻尺を思わせるタイトルです。先輩が言ったんじゃないですか」
 えーと、と俺は途端にしどろもどろになる。そんなの例に出しただけで、実際にどうすればいいかなんて考えていなかった。
「巻尺、まき、メジャー……、うーん……」
「対案がなければダメですね。議論はふりだしに巻き戻りました」
 後輩はいつの間にか手にしていたメジャーを少し引っ張り出すと、ぴしゃりと戻した。


「……と、ここまでが小話なんですが、どうですかね?」
 後輩の一人芝居をする一人芝居を見せられて、俺は頭が痛くなっていた。額の辺りを押さえてため息をつくと、後輩は少しむくれた。
「あー、ダメですよ! そのリアクションはまだ早いです!」
 いくら癖とは言え、と不満げだが、俺の方が大きな不満を抱えているだろう。
「早いってなんだよ! というかな、俺そんなリアクションしたことないぞ!」
「今してるじゃないですか!」
「これはお前の一人芝居をする一人芝居という入れ子構造の複雑さに、頭が痛くなっただけだ!」
 ぴしゃりと叩いてないだろう、そもそも。
「しかも、何だよお前。『メジャーな本』ってテーマだからって、花ぎれにメジャー仕込んだ本、だなんて。素人の一発ネタのウェブ小説かよ!」
「そこに一ひねりを加えて、メタな構造にしてるんじゃないですか」
 そこを評価してくださいよ、と後輩は言うが、そここそ素人の小説っぽさが出るところだ。誰がメタ小説なんて喜ぶんだ、というところに頭が行っていない。
「じゃあ、そろそろこれも小話ということで収めるので」
「やめろ、これ以上マトリョーシカを重ねるのは!」
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