お題:燃える宇宙 制限時間:15分 読者:43 人 文字数:1213字

好み
 アリサは三好くんのことが好きらしい。
 よりにもよって三好くんかよ、と思わなくもないわたしは、とりあえず理由を聞いてみた。
「顔。あと、背が高い。運動神経もいいし」
 わかりやすい理由どうも、と嫌味混じりのお礼を述べたが、アリサには通じなかった。
「まあ、それ以外ないよね。やっぱり顔が好きな人と付き合いたいじゃん、はじめては」
 なにがやっぱりなのか、とわたしは訳知り顔のアリサに呆れる。所詮は小学六年生の恋愛観しか持ち合わせていない我々に、そんなことを言う資格なんてないと思うのだが……。
「一応言っておくけど、三好くん性格はいまいちだからね」
「あんたが三好くんの何を知ってんのよ?」
 すぐ突っかかってくるなあ。だからアリサと話すのは嫌なんだ。
「アリサよりは知ってるよ。六年間同じクラスだし」
「何それ? 自慢?」
「いや、事実事実」
「人の好きな人横取りする気?」
「そんなこと言ってないじゃん。あんなの好きになるわけないし……」
「あんなのって何よ!」
 ああ、もう、どうすりゃいいんだよこの女。好きな人ができたとか恋愛がどうとか言いたんだったら、もっと大人になれよ。大人の女はきっと、こんなごね方をしないだろうし。知らんけど。
「じゃなくてさ、性格も見とけよって話してんの」
「顔もいいし背も高いし運動神経もいいんだから、性格もいいに決まってるじゃん」
 こいつカスみたいな人間観してんな。12歳にしても幼い。9歳ぐらいで成長止まってんじゃないか?
「三好くんってあんたが思ってるような人じゃないよ。必殺技とか考えて、男子の間でバカなことばっかりやってるのが好きな人なのよ。『バーニング宇宙パンチ!』とか言って野村とか原田とごっこ遊びで遊んでんのよ」
 野村と原田は、アリサが嫌いな男子だ。小六にもなってヒーローごっこみたいなことをしている。
「だから何? あたしと付き合ったらそれ止めさせるから。キモい二人とは縁を切らせる」
 うわぁ、とわたしは同級生に対して初めて「引く」という感情を味わった。
 ワガママが過ぎるし、幼すぎる。そんなの恋愛じゃないだろう。したことないけど。
「顔も背も運動神経も好みなんだから、その辺もあたし好みになってもらうのよ」
 とんでもない宣言だった。

 恐ろしいのは、アリサはしっかり宣言通りにしてしまったということだ。
 まあ縁を切らせた、というのは言い過ぎで、ごっこ遊びコンビと三好くんは中学に上がった後、勝手に疎遠になっただけなのだが、それでも言霊の恐ろしさを思わずにはいられなかった。
 その後、中三で付き合い始め、高校時代はくっついたり離れたりを繰り返し、大学卒業と同時に結婚したのだった。
 同窓会にやってきた三好アリサになったかつての女の子は、男の子を一人連れていた。
 彼は、母親の友達らしいわたしにこんなことを言った。
「ひっさつ、ばーにんぐうちゅうぱん」
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