お題:壊れかけの耳 制限時間:15分 読者:21 人 文字数:927字

変化する。
 この耳が壊れさえすれば、私はあの人を愛さなくても良いのかもしれない。愛しているから、あの人が私以外の人と仲良さそうに話している姿に苛立ってしまう。いや、むしろ既に壊れているから、私はそんなことで感情的になってしまうのだろうか。
 あの人は、モテる。女性からはもちろんのこと、男の人からもモテる。モテる理由は、あの人はなんでも包み込んでくれるから。自然にこの人になら全てを預けられると確信し、何もかもを知って欲しいと願うようになる。
 長く長くいるだけで、自然とそういう風になってしまうのだ。だから、あの人は出来る限り同じ場所に留まらないようにしていたのだろう。一回その場所を居心地良くしてしまえば、離れる時に苦しませてしまうから。離れずとも自分がいなければ円滑にならなくなるという事実は途轍もない負担になるだろう。
 そんなあの人に最後まで付き合いきれる人間は、私のような人間、つまり彼を好きになってしまった時だけ。それもそんな単純な好きではない。さっき書いた通り、全てを捧げられるくらい好きであるということ。
 私の知る限りでは、あの人を好きになったきっかけは、嫌悪感から始まった人の方が多い。あの人の全てを受け入れる態度はやはり人によっては気に食わないと思う。だけれども、それでもあの人は自分のやり方を変えない。嫌悪感は二週間も経てば消え去り、なんとなく面白い所をしってしまう。そうなってしまえばもう依存するしかない。
 そういう人たちは、みんな揃って変化を嫌っていた。自分のやり方を変えられなかった、無意味な価値観を持っていた人間が、あの人という盤外上の存在に接して嫌にでも変えさせられて、その変わった後が以前よりも居心地が良い。だから必然的に、あの人に染め上げられるのは当然だった。
 もちろん好きだからと言って妄信的にはならない。あの人は完璧では無い。勘違いもするし、失敗もする。掌もすぐ返す。そこから揉めることもしばしばある。だけども、それもまた魅力的に見えてしまう。ある意味卑怯である。

 私もあの人が嫌いだった。理由は覚えていない。だけれども、あの人はそれでも良いと言っていた。それを耳にした時から、私もまた、変わっていってしまった。
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