お題:賢い絵描き 制限時間:15分 読者:25 人 文字数:1219字

スーパーアシスタントのトレパク
 知り合いが「とてもいいモノを買った」と自慢してくるので見せてもらうことにした。
 この知り合いは同人で漫画を描いていて、それにとても役に立つものらしい。
 そんな趣味のために高級な道具をそろえて、と眉をしかめる方も多いだろう。わたしもそう思う。だが、彼女の父親はどこぞの地主で金は湯水のようにあるので無問題だ。
「漫画描いてて、わたし一番楽しくないのって背景なんだよね」
 いつも真っ白じゃないか、というツッコミはしないことにした。
「そこで、これの出番なわけよ」
 モノがぎっしりと詰まって足の踏み場もない彼女の部屋の一画に、それはあった。何となくATMに似た形をしている。モニタで操作するところとかそっくりだ。ただ、カードを入れる部分がCD-RやらSDカードやらのメディアを入れられるようになっているところと、通帳を入れるところがA3ぐらいまでなら出力できそうなプリンタの排紙口になっているのが、大きな違いだろうか。
「何これ? 複合機?」
 趣味のためだけにコピー機でも契約したのか、お嬢様なのも大概にしろよ、と戦慄したが「もっといいものだ」と彼女は言った。
「これはね、AIで背景を描いてくれるスーパーアシスタントよ」
 斜め上だった。もう一回言わねばなるまい。お嬢様なのも大概にしろよ。
 彼女がいうには、このATMもどきことスーパーアシスタントは、指定した背景を即座に出力してくれるという優れものなのだそうだ。しかも、印刷だけでなくパソコンに接続するだけでお絵かきソフトにその背景を簡単に配置できるとか。
「これさえあれば、背景を描く手間から解放されるわ。バリバリ漫画が描けちゃう」
 いやだからいつも背景真っ白だろ、と言いかけたが、彼女が楽しそうなので放っておくことにした。

 スーパーアシスタントを見せてもらって三か月ほど後、彼女が死にそうな声で「ねえ、聞いて……」と電話をかけてきた。
 直接会って話したい、と言われ家を訪ねると、三か月前のルンルン気分はどこへやら、一転げっそりとした顔をしていた。
「あのスーパーアシスタントのせいで、大変なことになったのよ……」
 彼女がいうには、スーパーアシスタントを使って描いた漫画が叩かれているらしい。
 原因は、そのスーパーアシスタントが出力した背景にあるそうだ。
 何でも、その背景はネット上の有料素材を加工し、絵っぽくしたものだったらしい。その素材の配布元から「違法な利用だ」とSNS上で公開で指摘があり、そこにネットイナゴが便乗、トレパク作家として叩かれる羽目に陥っているようだ。
 ネット上では関わらないようにしていたので知らなかったが、そんな面白……もとい、悲惨なことになっていたなんて……。笑いがこみあげてくる。
 だってそうだろう? トレパクだなんて言われているが、実際はもっと下なのだから。機械が勝手にネットで取ってきて加工してくれなきゃ描けないのだもの。
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