お題:朝の闇 制限時間:15分 読者:22 人 文字数:954字

ホコリ取り
 それは大体、部屋の隅にわだかまっていることが多い。ホコリが溜まるのと同じところで、ぱっと見には区別がつかない。気が向いて掃除機をかけたとき、何度往復させても取り除けなくてそれと気づく。周りのホコリが吸い取られて、残ったそいつは恨みがましそうにこちらを見上げている。
 姉の葬儀をしないことに決めたのは母親だった。
「あの子ったら、いつも影が薄くて、いるんだかいないんだかわからなかったし。葬式をしたってお友達も誰も来ないわ。そんなの恥ずかしいもの」
 母が言えば、この家では誰も逆らえない。親戚のまえではしおらしくしていても、家のなかとなると、家事の一切を取り仕切っている母が絶対権力者だ。姉が階段から落ちて死体になっても、母が決めたなら通報もしなかった。
「お父さんが途中で飽きた自家菜園があったじゃない。あそこに埋めましょう」
「それがこの前再開したばかりなんだ。ブロッコリーの種を撒いた」
「なによそれ。私に相談もなく」
 母は父を軽くボコってから、新たな提案をした。
「じゃあ床下にしましょ。あんたの和室なら、畳が外れるわよね」
 自分の部屋の下に姉がいるのなんて絶対イヤだったが、家にいるときの母には逆らえない。それに、姉を肥料にして育ったブロッコリーが食卓に並ぶのだってイヤだったし、しぶしぶ了承した。
 部屋の隅に、どうやっても取り除けないホコリが溜まるようになったのはそのときからだ。
 すがすがしい朝が来て、窓を開ける。部屋全体に明るい朝日が差し込むが、隅っこにどうやっても照らせない一角がある。掃除は昨日したばかりだ。そこ以外はすっかり綺麗なのに、わだかまった闇のせいで、どことなく薄汚れて見える。
「恨みがあるなら母さんに言うんだよ」
 生前、こんなふうにして姉に話しかけたことはなかった。もしそうしたとして、今のように無視されるだけだっただろうが。
 どうして隅なのだろう、とたまに思うことがある。姉の真上に敷いた布団で夜眠るときは、なにも感じたことがない。姉の存在を意識するのは決まって朝だ。
 姉はホコリと同じような見た目だから、性質も同じなのかもしれない。知らぬ間に恨みを溜めて、じっとこちらを見つめている。掃除機がだめなら、はたきでも買って試してみるべきなのかもしれない。
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