お題:愛、それは光 必須要素:サッカーボール 制限時間:1時間 読者:12 人 文字数:1561字

光源装置
 あてもなく逃亡生活を送っていた私はとある噂を知った。今の私達の生活に欠かせない、情報認識ゴーグルにノイズが発生するエリアがあるというのだ。肉眼で見るとなにもない。現代の人間は店や道、あるいは街歩く人の情報を得る手段に、情報認識ゴーグルというものを使っていた。行き先を指定すれば矢印が表われ、食事したければ意識するだけで嗜好が合う店を知ることができたし、会話したり、見たことのある人にはマーカーが付く。だから知り合いを見逃すこともない。
 私達は今巨大なコロニーに住んでいる。地球から少し離れた人工的な惑星だ。人類で三個目になる人工惑星。1号機、2号機で地球由来のより自然に近い食物が高騰し、問題となった。栄養価ごとに粉末状にされ見かけも人間が好む完全食より不完全な自然食が売れたのである。その問題を解決するために、コストを理由に今まで見送られてきた、農業地帯や漁業地帯など地球にある自然をより多く再現したコロニーである。
 しかしこのコロニーには大きな問題があった。利権である。当初の計画では生産管理者と区画管理者に4:6の割合で金銭が割り振られるはずだった。生産管理者は農業をするシステムの管理、区画管理者はその土地を自然に近づける空間の管理をしていて、それぞれに組織を持つ。
 このコロニーはサッカーボール状の五角形と六角形で物理的に区画わけをしていて、五角形が人の住む空間で六角形が自然区画となっている。この区画を作る設備投資を区間管理者側がしているため、区画管理者側に利益を還元する形だった。立ち上げ当初は利益もそこまでではなく、設備投資をした区間管理者側は実質赤字だった。しかし1,2号機にそれらを輸出するようになってから大きな売上を出し、それは一転し、農業管理者側が不満の声を上げた。
 区間管理者と農業管理者とで大きな派閥争いが繰り広げられた。私と元妻は区間設備を開発する科学者だった。しかし区間管理者側の状況がよくないことを察した私は、元妻と子供を農業管理者側にいわば亡命する形で逃がすことにした。元妻と激しい口論の末、離婚。離婚が結果としては成功し、農業管理者側に捕まる形で妻と子供を農業管理者側に逃がすことに成功した。
 予想通り区画管理者は派閥抗争に負けた。反抗的でない人員はそのまま使い、そうでない人員は最悪殺される事態となった。私達は逃げた。そのうち仲間とも離れちりじりになった。
 今私の身元は買った物であり、本物の身元がバレると命の保証はない。人を管理するため、手には人認識装置が埋め込まれている。その機械が光を発し、読み取り機械で認識をする。私は発する光の上からさらに買った別人の認識装置をつけている。またそれ以外に区画管理者である証明の、筒状の形をした光印を持っている。
 ノイズは区画管理器具と何かしらの認識装置が干渉していることが多いことを職業柄知っていた。それにまぜる形で、農業管理者側の傘下になった区画管理側が逃げた私達にメッセージを送っていることもあった。おそらく農業管理者側も知っているため、罠の可能性もある。しかし見に行かないわけにはいかなかった。
 私はノイズが発生と噂されているところに来た。人通りはほとんどない裏道である。ノイズは何かの情報映像がモザイクの形で崩れていた。モザイクを解析すると光という文字が見えた。なんのことかはわからない。が、私達にとって光といえば自分の身元管理装置、もしくは区画管理者の光印くらいしかなかった。
 自分の身元管理装置をモザイクに当てる。何かの映像がゴーグルに流れ始める。モザイクが崩れはじめ現れた映像は、大きくなった子供と少し老け込んだ妻の姿だった。
 音声はない。ただ妻の口元が動いているのが確認できた。
「わたしたちは元気よ」
作者にコメント

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