お題:安全な夢 制限時間:1時間 読者:15 人 文字数:1602字

怖い夢
 私はどうにも夢見が良い方らしい。生まれてこの方、不安になる夢をみたことがない。みたことがないからそもそも不安な夢というのがどのような物かもわからない。夢見が悪いと良く言う妻曰く、落ちたり追いかけられたり、歯が無くなったり髪が無くなったり、まあそんなところよとの事だ。
 実際に妻が突然飛び起きるのを見たことがある。朝目を覚ましコーヒーをリビングで飲んでいると寝室から妻が飛び出してきたのだ。薄ピンクのパジャマは汗びっしょり。息も荒い。どうしたのと聞けば夢でね、とそう語ろうとする。しかし当然ながら大部分は覚えているが細部はおぼろげだ。そこは私が見る夢と変わらないらしい。その日はいつもより早い朝食になったのを覚えている。
 現実でも学生時代から山も少なければ谷も少ない順調な生活を送っていた私だが、どうやら少し社内でキナくさくなってきたらしい。社長が代替わりをするのだがあいにく息子は継ぐ気がないらしい。私の会社は中規模で部長兼役員の形になっている。そして私の部署の部長が有力らしい。しかし二番手の部署には社長の娘の彼氏がいるので少しややこしい構図になっている。
 彼氏というのがまたやっかいでそのまま結婚するかどうかも不明だし、かといってないがしろにしては結婚した後面倒くさい。というわけで社長が少し悩んでいるものだから余計に社内はどちらに傾くかでゆれている。私は正直どちらでもよいのだが立場上どちらでもよいというわけには行かない。
 そんなわけで少し慌しくなってきたある日、床につくと蛇のようなものに追いかけまわされる夢をみた。横には部長や社長が同じく走っている。凄い速度だが改めて考えると部長や社長の腹回りを考えるとそんなに早くは走れまい。と感じたときこれが夢だと気づいたのである。しかしどうやったら目覚めるのかわからない。クタクタになるまで追い回されてそろそろ無理だと感じ始めた頃、目覚ましの音がなり夢から脱出できた。
 汗ダクダクで寝室から出るとちょうど妻が廊下にいた。妻は心配そうな顔をしていた。
「どうしたの」
「大したことじゃないよ。夢見が悪かっただけだ」
 というと妻はクスクスと笑った。
「あなたにも夢見が悪いなんてことがあるのね」
「ああ、初めての経験だよ」
 その日の仕事はあまり捗らなかった。
 どうにも夢見と現実の活動は関連しているらしい。私が気づいたのはその一ヵ月後だ。波風が立たなかった日は夢見は以前と変わらない。逆に大なり小なりいざこざがあった日は落ちたり逃げたりする夢を見た。
 私はストレスを感じすぎているのだろうなと思ったし、事実社内のストレスチェックにも引っかかった。気分転換に今までより妻とあちこち出かけて見たりしてみた。しかし毎日の通勤時間に夢見を気にするようになるまでになってきていた。
 三ヶ月ほど経ったある日家を出ようとしたときに妻に呼び止められた。三ヶ月の中で一番夢見が悪かった。それが顔に出ていたのだと思う。
「顔色悪いよ。今日くらい休んだらどう?」
 最近の様子のおかしさは目に余るものがあったのだろう。自覚もしていた。
「そうしたいのは山々だけどね。でも他の人に迷惑がかかるから」
「一番大事なのはあなたの体よ」
「わかってる。じゃあ行ってくるよ」
 正直なところ今日も会社のいざこざにこの体調では二重に仕事は捗らないだろうなと思いながら車に乗り込む。
 いつもどおり夢見について考えながら運転する。家を出てすぐの交差点を右折、二つの交差点を直進した後、次の交差点を左折。曲がりきった先には正面にはトラックが迫っていた。あわててブレーキを踏む。ブレーキ音とクラクションが鳴り響く。なんだ?逆走か?そう考えている正面に映るトラック。運転手の驚く顔。悲鳴。
 そこで私は目が覚めた。
 私は会社で食堂でその話をした。
「その話どこからが夢なの?」
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