お題:打算的な村 制限時間:15分 読者:57 人 文字数:944字

報いる
 村外れにひとりの男が倒れているのを発見したとき、住人たちは「ついにきた」と思った。近隣の村から噂は伝わってきていた。その者はたとえば老婆だったり、ちいさな子供だったり、ときには犬や鳥の姿だったりする。共通するのは傷つき、助けを求めて村外れに行き倒れていることで、なんでもその正体は仙人らしく、親切にしてやるとあとで見返りをもたらすという。近隣の村はおかげで繁栄し、今は町と呼べるほどの規模になっている。
 若者が出ていくあまり、どんどん寂しくなっていたこの村も、村おこしを必要としていた。といって特に名産とか観光資源があるわけでもなし、人智を超えた仙人のちからを借りられるのなら、こんなに楽なことはない。
「旅の途中で行き倒れてしまった……どうか、一杯の水を」
 旅人が言い終わらないうちに、住人は総掛かりで男を運び、いちばんいい家を用意して豪勢な食事を振る舞った。なんといっても相手は仙人、村をあげて歓迎し、満足して帰ってもらわねばならない。
「好きなだけ食べてくだされ。寝床の用意もすでに済んでおります」
 予想だにしていなかった手厚い歓迎に、旅人は目を白黒させるばかり。どう考えても一介の旅人にここまでのもてなしができるわけがないほど貧しい村と見えたのに、と驚いた。
 遠慮をしたか、旅人は食事に手をつけず、深刻そうな面持ちで打ち明けた。
「じつは、私は罪人で、都を逃げ出してきたのです。匿えばあなたがたも罪に問われる。ここまでしていただかなくても結構。一杯の水だけを分けてくだされば」
 もてなしを少しも嬉しがらない様子には、そういうわけがあった。住人は顔を見合わせ、「試されているのか」と囁きあい、互いにうなずいた。仙人は助けるのをためらうほど、汚い身なりをしていたり、醜い姿形をとるものだ。助ける者の善性をそうやって試すのだ。
「私は助けるほどの価値もない、極悪人なのです。手を差し伸べれば、あなたがたはきっと後悔するでしょう」
「われわれは困っている人を見捨てたりいたしません!」
 住人一同、声を揃え、その晩は強引に男を泊めた。男は自分で言うとおりの悪人で、村じゅうに家財を盗んで火を放ち、悪行をすべて働いてから、「だから言ったのに」と、お人好しばかりの村に首を傾げた。
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