お題:何かの冥界 制限時間:15分 読者:4 人 文字数:413字
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未至
ぜえ、ぜえ、と自分の息遣いだけが煩く響く。既に周囲から緑は消え失せ、疎らに白が散った岩肌のみが続いている。雲間から覗く下界はただ緑が広がり、原始の風景のように見えた。
頂を掴んだ達成感のままに腰を下ろせば、なんだか自分が神にでもなったかのような全能感すら感じる。
見える範囲に人間はおろか、他の動物すら見えやしない。この世でひとりぼっちかのように思えた。いや、6合目辺りに相棒が待っている筈だが、ここからは視認できない。彼の熱はもう治っただろうか。



ああ、今回もダメだった。




一体どれほどの時間が経ったのだろうか。気がつけば呼吸は安定し、手足の末端が少々冷えてきた。そろそろ煩雑な下界へと帰らなければ。名残惜しさを感じつつもゆっくりと、足を踏み外さぬよう、降りていく。

さようなら、天界、或いは、冥界。私は生きてここを出ていく。再び御目通りする機会があるならば、今度こそ、私を真の冥界へと誘ってくださいませ。
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