お題:ナウい朝飯 制限時間:30分 読者:27 人 文字数:1033字
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おいしそう!!
 朝目覚めると、お父さんが台所に立っていた。珍しいこともあるものだと思い、僕はお父さんの背に向けて、声をかける。
「おはよう。何つくってるの?」
 僕の声を聞いたお父さんは振り返り、がばりと口を開けて笑いかけてきた。
「おう、おはよう。これはな、エッグマフィンだ」
「エッグ……? なんて?」
 聞き慣れない和製英語に、思わず怪訝な顔をしてしまった。そんな僕を見て、お父さんは仕方ないなと言う顔をして、もう一度はっきりと言い直してくれる。一音一音区切って、まっすぐに僕へ伝えてようとする。
 エッグマフィン。全く聞き慣れない言葉だ。なぜお父さんがそんな小洒落た料理をつくっているのかわからない。それに、そんな料理のため、わざわざ早起きして朝ごはんにと準備しているのだって、僕にはちっともわからない。
 聞きたいことが山ほどあったはずなのに、お皿に盛り付けられようとしているエッグマフィンを目にしてしまうと、途端にどうでもよくなってしまった。だって、あまりにもおいしそうな見た目で、食欲を唆る匂いをしているから。
 食べたい。瞬時に僕はそれだけを思った。そしたらもう、たくさんの「なぜ?」はどこかへ行ってしまった。追いやられてしまった、と言ったほうが正しいのかも。
「座って待っていろ。もうすぐで完成だから」
 お父さんが嬉しそうにそう言う。僕も素直に頷いて、リビングの真ん中に置かれたテーブルへと向かう。いつもの場所、キッチンから見て左側の手前の椅子に座る。どの椅子も同じ形、同じ手触りをしているのに、なぜだか僕は、その椅子がお気に入りだった。
 椅子に座り、足をブラブラさせながら待っていると、お皿に乗せたエッグマフィンとともに、お父さんがやって来た。
「さぁ、朝ごはんだぞ」
 そう言って、テーブルに置かれたエッグマフィンをしげしげと眺める。なんてきれいなんだろう。なんて魅力的なんだろう。僕は一瞬、感動で言葉を無くしてしまった。僕がぼうっとしていた間に、お父さんはお皿の左右にフォークとナイフを素早く配置してくれた。
 夢見心地のまま、僕は手を合わせる。いただきます、ありがとう、お父さん。3つの言葉をおまじないみたいに口の中で転がしてから、フォークとナイフを左右の手に持つ。いよいよだ。いよいよ僕は、この現代風っぽいおしゃれな朝ごはんを口にする。
 どんな味がするのだろう。ワクワクとドキドキで胸を高鳴らせながら、僕は最初のひと口を口の中に運んだ。

終わり
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