お題:君と犬 制限時間:15分 読者:29 人 文字数:1212字

多頭飼いの弊害
「わたしとロッキー、どっちが大事なの!?」
 君は怒った様子で僕のことを見上げてくる。
「最近ロッキーのことばっかり構ってるよね?」
 確かにそうだ。ごめんよ、と撫でた僕の手を君は振りほどいた。
「こんなの慰めにもならない」
 プライドの高い君はつんとした様子で僕に背中を向けた。
 そんなに怒るなよ、と僕はしゃがんで君と並んだ。
 確かに、ロッキーのことは大事だ。僕にとっては特別な存在だよ? だけど、それは君も変わらない。どっちが上ってことじゃないんだ、どっちも同じように大事なんだよ。上か下かを決めるのが大好きな君たちには、わからないかもしれないけど……。
 何度も背中を撫でられて、君はやっと僕の方を向いたてくれた。鼻先を僕の胸にこすり付けて甘えてくる。まるで、ロッキーのにおいを自分のそれで上書きしようとするかのように。
 やきもちさんだな。
 僕はじゃれついてきた頭を撫でてやった。君は大きな体を使って、僕の上に覆いかぶさってくる。ロッキーにはできないでしょ、とばかりにのしかかってくる。
 僕は君を抱きしめて、床に寝転がった。たくさん撫でられて、君はうっとりとしている。
 そうしてそのままゆっくりと目を閉じた。

 寝ちゃったか。
 僕はそっと離れて、ゆっくり立ち上がる。
 床に寝転んだ君は、ふわふわの毛布みたいだった。
 おやすみ、チョコ。僕は心の中でチョコに――大事な愛犬に挨拶した。
 チョコはロッキーと相性が悪い。だから、こうしてチョコが寝静まった後にしか、ロッキーの相手はできない。チョコが起きている時は、なるべくその相手をしてやりたいのだが、僕にも仕事があるし、家に来たばかりのロッキーの面倒も見ないといけない。
 多頭飼いの弊害だな、と僕は薄く笑った。
 まあ、こんな生活は長くは続かない。ロッキーのことは、しばらくしたら放り出すつもりだ。
 僕はリビングを離れ、奥の寝室だった部屋へ向かった。
「やあ、ロッキー」
 寝室のベッドの隣に置かれた犬小屋に、その前に座っているロッキーに声をかける。
「期待に打ち震えて、待っていたんだろう?」
 寝室はすごいにおいだ。まあ、もう二度とここは寝室として使わないので構わないが。
 僕はにおいの原因であるロッキーのシモの処理をした。ロッキーは鳴き声一つ立てずに、こっちをじっと見つめている。
 いや、立てられないのだ。そうなるように、口枷をしているから。
 何せ、連れてきた日はきゃんきゃん騒いで大変だった。噛みつきすらしてきたんだ。そこからここまで大人しくしたことに、僕は自画自賛せずにいられない。
「じゃあ、今日は何して遊ぼうか……」
 ロッキーの眼に怯えが映る。僕が「おもちゃ箱」に手を伸ばすのが見えたからだ。
 さて、何で遊ぼうか。カメラは回っているし、そうだなあ……。
 僕はロッキーを、少し前まで岩木かなという名前だった女の子を見下した。
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