お題:春のオチ 制限時間:15分 読者:26 人 文字数:1511字

オチのつけ方
 ハルの話にはオチがない。そのくせ話好きで、いつも長々と聞かされる。
 だらだらしたトークを繰り返されること百回近く、ついにチナツがキレた。
「あんたの話、オチがないんだよ! みんな迷惑してんの! 長々話して、いっつも尻切れで終わってさ! この時間泥棒!」
 マジギレのチナツに、ハルは一瞬怯んだような顔をして泣き出した。
 それでもチナツの攻撃は続く。
「泣けば許されると思ってんの? 泣けば、あんたがあたしらからこれまで奪ってきた時間が戻ってくるとでも? んなわけないよね? わかってんのか?」
 その辺で、とわたしはさすがにチナツを止めた。
「あんただってわかってんでしょ、ヒイラギ! いっつもうんざりだって言ってたじゃん!」
「いや、そうだけどさ……。みんな見てるし、泣いてるし……」
 チナツは舌打ちした。教室のほぼ中央でやらかしてしまったので、周囲の視線を独り占めしてしまっている。椅子を蹴り倒すようにして、チナツは教室を出て行ってしまった。
 残されたわたしは、ハルを慰める。
 えぐえぐ言いながら、ハルは赤い目でこちらを見上げた。
「やっぱり、ひーちゃんも、わたしの話、面白くないって、思ってた?」
「……えーと、まあ、その……ほら、ね、色々、あるじゃん!」
 誤魔化した。さすがにわたしはチナツのように、バッサリと正面から切り捨てることはできない。
 三人組で二人が対立してしまったら、残った一人はどちらかにつくわけにはいかなくなる。キレたもん勝ちの世の中なのだ。
「とりあえずさ、泣きやんで……。ほら、高校生にもなるんだから……」
 そうやって何とかわたしはその場を収めた。そのつもりだった。

 翌日からしばらく、ハルは姿を見せなかった。
 チナツはさすがに気まずそうだった。
「言い過ぎたかな?」
「まあ、うん……」
「でも、あいつぶりっ子みたいなとこあったしさ、これがいい薬になって、生き方とか見つめ直してくれるきっかけになったらさ」
 どこ目線だよ、みたいな話をチナツはする。
「とりあえず、謝りなよ」
 一応言っておくが、そうするつもりはチナツには毛頭なさそうだった。
 チナツブチギレ事件から10日後、ようやくハルは学校に出てくるようになった。
「おはよう」
「おはよ。よかった、来てくれて」
 一応歓迎の意を示すと、ハルは「ねえ聞いて!」と話を切り出した。
「昨日、チナツちゃんに会ったの」
「あ、そうなんだ」
 新生ハルのお話は、果たしてオチというゴールを見つけられているのか。わたしは横目で教室を見回す。まだチナツは来ていなかった。
「わたしが呼び出してね、話し合おうと思って」
「うん」
「だけどね、チナツちゃんね、すごく怖い顔でさ……。あ、怖い顔っていうとね……」
 そこから内容がだんだんと脱線してくる。隣の家の犬の話になり、体育の鈴木先生の話になり、休んでる間に食べたスイーツの話になり、かなり遠回りしてから、ようやくチナツに戻ってくる。
「ホントね、怖い顔してたの。わたしの方が怒ってるのに、おかしいよね」
「お、怒ってるんだ……」
 いささか体力を奪われながらわたしが尋ね返すと、「そりゃそうだよ!」とハルは鼻息荒い。
「だってさ、言われもなく泥棒扱いされたんだよ? そりゃ怒るよね。だからさ、オチを用意したんだよ」
「オチ?」
 そう、とハルはにっこり笑う。笑って、鞄から何か機械のようなものを取り出した。
 デジタル時計といくつものチューブに、それにいかにもな丸い管のようなもの。
 爆弾だ!
「爆発オチをつけようと思って、あと30秒だよ。チナツちゃんにも見せたんだ」
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