お題:許せない船 制限時間:15分 読者:48 人 文字数:858字

結論
「反省していないのなら、出て行け」
 説教にはお定まりのそんな台詞も、今のような状況ではわけが違った。普通に地面のある場所のように、部屋を出て、建物を出て、はいさよならというわけにはいかない。昨晩遭った嵐で戸どころか屋根まで吹き飛び、やっとのことで四方を囲んでいる壁の隙間からは、一面に海原が覗いているのだから。
「船長、クルーは一蓮托生、喧嘩したからって船から放り出すわけにはいきません」
「出て行けなんて、非情というものですよ」
 狭い部屋、もとい四方をぐらぐら揺れる板で囲まれた空間で、クルーは必死になって船長をなだめた。四人で乗り込んだこの屋形船を運航するには、ひとりの力だって欠かせない。ひとり減れば、仕事が1.5倍になる。船長は舵を回して遊ぶだけで仕事をしないから、ほかのふたりにとってはそういう計算になる。必死になるのも当然だった。
「飼い猫にやった餌が腐ってて食中毒になったくらいで、そんなに怒らなくても」
「この船にはネズミはいないし」
 船長が船上で飼っていた猫を死なせかけたのが、諍いの発端だった。今は容態の回復した猫を膝に乗せ、船長はそっぽを向いて頬を膨らませたままだ。
「ミーちゃんは三日三晩苦しんだんだ。そいつを三日三晩海に放り出さなければ気が済まん」
「三日もあれば、こんな荒れた海で人は死にますよ」
「荒れてなくても死にます」
 クルーの必死の説得にも、船長は耳を貸さない。猫好きは猫のこととなると、見境をなくすのだ。
「……べつに、放り出したきゃ放り出すがいいさ。どのみち全員死ぬんだ」
 陰気な声をあげたのは、説教を受けた当のクルーだ。ずっと黙り込んでいたが、怒られてしょげていたわけではないらしい。嵐がきて、座敷の屋根が吹っ飛んだあたりからおかしくなりはじめ、猫に八つ当たりしたのだった。
「屋形船で太平洋横断なんて到底ムリだったんだ! こんな無謀な試みを言い出した船長を突き落とすべきだ!」
 それもそうか、とクルーの言葉に納得し、満場一致で船長をすまきにして船外放り出した。
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