お題:かっこ悪い墓 制限時間:15分 読者:34 人 文字数:1187字

死にざまを映す墓
「墓ってさあ、みんな同じ形でかっこ悪いよな」
 生前、確かに彼はそんなことを言っていた。
 だけど、まさか自分が死んだあとのことまでこの時点で考えているとは思わなかった。何せ、彼はまだ26歳、一般的には死の足音が聞こえる年齢ではない。
 予感があったのかもしれない。事故ではあったけれど、理屈を超えた感覚が彼のどこかで芽生えていたのだろう。
 彼が死んですぐ、具体的には3時間もしない内にその人は現れた。
「すみません、ヘロヘロ教のものですが」
 その女性は新興宗教ヘロヘロ教の司祭的な存在で、彼は約一年前に入信していた、という。
「その時に提出してもらった住民票のコピーを証拠としてお出しします」
 宗教にしてはえらくシステマチックだ。女性司祭の出してきたのは、確かに彼の名前と本籍地が印刷された書類だ。
「葬式でもしてくれるんですか?」
「いいえ。うちはそういうのやってなくて」
 冠婚葬祭をしない宗教に何の意味があるのか、とわたしは疑問に思う。
「ただ、うちはお墓にこだわっておりまして」
「墓ですか」
 女性司祭曰く、墓石はヘロヘロ教では教祖であるヘロヘロがあの世へ辿り着く目印と考えられているらしい。そのため、墓石に力を入れている、とのことだった。
「うちの墓に興味を持ってもらったようで、それで入信したい、と……」
 驚きました、と女性司祭はしみじみという。
「まさか、うちの宗教に入信しようという人が現れるなんて……」
 やる気あるのかな、この人。ちょっと心配になってきたが、何とただで墓石を用意してくれるらしく、彼の両親はその話を聞いて「ではお願いします」と言った。新たな墓石を造らなくて済むため、浮いたお金で葬式のグレードが少し上がったが、それはまた別の話だ。

 しかし、いざ建った墓を見て彼の両親は激怒する。
「何だこれは、ふざけてるのか!?」
「いいえ、故人の遺志です」
 やる気に疑問のある女性司祭であったが、この問題に関してはとことん強気だった。
「故人様はこちらの墓に非常にこだわりを持ってらっしゃいました。それを尊重してあげてください」
「いや、しかしなあ……。土着の民間信仰じゃないんだから……」
 わたしもどうかと思う。形状はともかく色がアレだし、それに死に方を考えると……。
 荘厳な印象の寺の墓地、灰色の中に屹立するピンクのそれは、大変目立っていた。
 円筒形の上にカメの首のような膨らんだものがついたその形は、正に男性器である。その上、裏側までかなりリアルに造られている。
「故人様の死にざまにもピッタリかと」
 これでヘロヘロも迷わずに済みます、と司祭は自分の宗教特有の祈り方をした。
 彼の死因は腹上死だった。それも、わたしという婚約者がありながら、二股をかけていた女の腹の上で死んだのだ。
 確かに、ピッタリかとは思うが……。
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