お題:ありきたりなアレ 制限時間:30分 読者:8 人 文字数:888字

求めたものは
「つまんない」
 そう彼女は言った。特に感慨も無く。
「もっと刺激的なものがいい」
 そう彼女は続ける。特に興味も無く。
 ――幾人もを相手にしてきたからなのか、それとも別の理由からなのかは分からない。
 ただ、彼女は繰り返す。同じ言葉を。
 一時の快楽ではもう、彼女は笑いすらしない。何年も続けてきたせいで、感覚がマヒしているんだろう。
 それを自分にどうこう出来るとは、思っていない。だけど、彼女は傍に居ろと言う。見てろと言う。
 正直言って、普通じゃない。だが彼女にはそれが普通で、退屈なのだ。
 だけどいつからか、その相手は自分になった。つまらない、刺激が欲しい、そんな言葉は聞こえなくなった。
 何故だろうと思いながら、彼女は既に経験したであろうことを、いくつも試す。その度に彼女は笑顔になる。

 ――これもいつか、つまらないと言われるのだろう。そう思いながら、自分は止めない。

 何故なら、彼女を愛しているから。

※ ※ ※

「もう飽きたの?」
 そう彼は問うた。別に嫉妬もせず。
「何が刺激的だと思うの?」
 そう彼は訪ねる。別に好奇心でもなく。
 ――幾人も相手にしてきたけれど、それが当たり前になってしまった今、何も楽しくない。
 ただ、彼が居るから繰り返す。同じ行為を。
 一時の快楽程度じゃ、面白くさえなくなった。何年も続けてきたせいで、彼は何も感じなくなってしまったのかもしれない。
 こんな事を彼に求めても、受け入れてなどくれないだろう。だけど、傍に居て欲しい。見て欲しいと我が儘を言い続けた。
 正直言って、異常だと自分でも思ってる。でも彼も自分も、それが当たり前になってしまった。
 他の相手を求める事にさえ退屈して、ついに彼を求めた。飽きもしないし、刺激的で、最初からこうすればよかったとさえ思う。
 彼は見ていた事を私に与えた。私が忘れてたような事さえも覚えていて、嬉しくなった。

 ――いつか全部やり尽くしたら、どうなってしまうのだろう。そう怖くなりながらも、私は止められない。

 だって、彼を愛しているから。



おしまい
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