お題:紅茶と高給取り 必須要素:高校 制限時間:15分 読者:9 人 文字数:649字

一分の無駄
白磁のカップから湯気が昇っている。死んでいない紅茶だ。淹れたのは、もちろん目の前に座る男だろう。
無精髭が生えている。それも丁度いい塩梅の無精髭だ。清潔ではない。けれど汚いと評するのも何か違う。それは必要な汚さなのだ。
「園田さん」
はい、と私は返事をした。園田とは私の名前である。
「飲まないのですか?」
男はカップに手を向けた。湯気はまだ立っている。別に、飲みたいわけではない。
「いただきます」
わたしは持ち手に指を添えた。飲んでいる間、男の視線はわたしを向いていた。
いや、違う。
この男は私を見ていない。
何を、見ているのだ?
わたしはソーサーの上にカップを置いた。耳に障る高い音がした。
急激に逃げたくなった。目を、前を見ていたくない。逃げ場を探して、カップに着いた口紅を見る。
紅。
べに。
紅茶。
「まだ、残っていますよ」
もう喋りたくない。わたしは胃に液体を流し込んだ。喉を通るたび、ことばが消えていく心地がした。
「ほう」
わたしは息をついた。
「例の件ですが」
男はいきなり喋った。脈絡膜というものがない。まるで私などこの部屋にいないように。
ああ、成る程。
こいつには、私は見えないのだ。
「例の件など、知りません」
「しかし、あなたがこちらのリストに載っているということは、そういうことです」
「そちらの手違いではありませんか?」
「期日も迫っています。それではここにサインするだけでもいいので」
「お断りします」
男は去っていった。私はタバコの煙を燻らせた。





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