お題:紅茶と高給取り 制限時間:15分 読者:17 人 文字数:1434字

angel dive
目前に広がる夕焼け。

世界を覆うようなオレンジ色に感銘を受ける。

こんな世界で生を受けたことに感謝しながら、下を見る。

動き続ける粒の数々。

こうしていると、この世の全てを支配しているかのように錯覚する。

だが、果たして支配されているのは、私か、彼らか。

何故私がこんなところに立っているのか。

それは、終末を望んでいたから。

ここに来れば、なにかが変わると思ったから。

だから、まさか本当に世界が変わるとは思っていなかった。

目の前に浮遊する天使。

彼女の微笑みが、全身をぞくりとさせる。

未知との遭遇。

その事実に、身体が震える。

まさか、本当に世界が終わってしまったのだろうか。

これから、7つのラッパが吹かれて、世界が終わってしまうのだろうか。

だが、目の前の天使はなにも言わない。

そこで、私は気づく。

これは、私の天使だ。

いや、ある意味で自分自身だと言える。

寡黙な天使はただ微笑んでこちらを見つめる。

そこに影はない。

だからこそ、天使が幻想であることを認知する。

「この世界に、救いはあるか」

それでも、私は敢えて問いかける。

私自身が抱いている思考の結末を。

『この世界に救いは無い』

予想している答えが返ってきて、安堵する。

やはり、天使は私の見ている幻想だ。

「私は、救われるのか」

『貴方は救われない』

予測していた答え。

いや、用意されている答え。

それを自分に突き刺す。

自らの生を確認するために。

「私に待つ罰は何か」

『貴方の罰は、無関心であったこと』

愛の反対は何か。

その問いの答えが、無関心であると聞いたことがあったから。

だからこそ、そう返ってきたのだろう。

ふと、口元を歪ませる。

これまでの質問で、目の前の天使が自らの幻想であるということを理解した。

けれど、その上で敢えてもう一度問いかける。

「貴方は私を殺せるか」

自我の消失。

私がここにいた証が消えるということ。

『私には、貴方を殺せない』

ある意味で、予想通りの答えだ。

やはり、自我は殺されることがない。

…だが、これなら。

「貴方は私になりたいか」

『私は…』

初めて、天使がたじろぐ。

もう一人の私に対しての問い。

否定ではなく、肯定でもない。

それは、天使がなにかを思考しているからだろうか。

それとも、人という曖昧な境界線を越えることができないからだろうか。

「質問を変える。
私は貴方になりたい。
貴方は応答するか」

『私には、″わからない″』

揺らぐ意識。

境界のいうものが曖昧な存在。

幻想と実体は違う。

けれど、世界なんてそんなものだろう。

今、自分が幻想と会話していること自体が歪なのだ。

「私は、この体を貴方にあげよう」

譲歩する。

貴方の意思を尊重するために。

自己の逃避を完結させるために。

『…わかった』

はじめて、天使が頷く。

邂逅。

この時、はじめて私は未知を手に入れた。

「ありがとう。
貴方の人生に幸あれ」

そう言って、体を後ろに倒す。

今、私の意識は目の前の崖から落ちた。

当たり前だ。

空に浮いていた天使の羽が消えたのだから。

けれど、これで私は自由の身。

どこへだっていける。

とびらを超えて真実を得ることも。

世界の真理を手に入れることも。

全て思いど

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