お題:かゆくなる夜 制限時間:15分 読者:19 人 文字数:658字

ホテルのコーヒーがやたら薄い
どこまでもどこまでも水で薄めたコーヒーみたいな、中途半端で必要のない気休めのようなことを聞かされていた。
やれ、どこの誰がなになに大学の推薦だなんだと、長い爪を持て余しながら言うものだから、そんなことが羨ましいなんておかしいぜ、と彼女がチョコチップクッキーをつまむ為に目線を下げた時に声を出さずに言った。
なにか口に運んでいないと落ち着かないのなら家畜にでもなればいいのに、女はそんな自分が賢いと思い込んでいた。別に僕も賢かないが、賢くないことを自覚している分控えめな方だ。
女は僕を蛇のように睨みながら、猫のような声で囁いた。
将来的に結婚するならやっぱり安定した職業の人がいいのだそうだ。何か資格を持っていて、語学が堪能で、それなりに鍛えていて、エトセトラ。
女が指折り数えるのを途中から聞き流した。三つでも聞いたら十分だろう。
メニューを見ながら、ふうん、とか、そうなの、と返事をしてやりながら僕は店員を呼ぶ。
焼き鳥と揚げ出し豆腐と、生ビールを頼み、代わりに出て来た枝前豆とひじきを口に運ぶ。大豆だらけになってしまったな。ひじきにも大豆が入っている。
何歳までには結婚したいという話に入り、とうとう子供は何人欲しいという話になった。
何も頼まないのにどうして一緒に居酒屋に来たのか尋ねると、ようやく女はメニューを眺めて静かになった。後五分聞いていたら身体中に湿疹が出来そうだった。
僕は気が弱い方なので、ビールを一杯飲みほしてからようやく言いたいことを言った。
僕たちはたった二回しただけだ。付き合ってない。
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