お題:寒い電車 制限時間:15分 読者:22 人 文字数:517字

夜の海に取り残されてしまったので
腕時計に視線を落とす。

照明が落ちてから3時間45分、スマホの充電が切れてから約10分が経過したらしい。
室内を見渡すと、数人がうなだれていたり、横たわっている。
5時間前にはパーソナルスペースが5センチほどしかなかったこの場所も、ずいぶんと快適になったものだ。

窓の外を眺めると、海面が月の光を反射し、静かに揺れていた。

「みんなはさ、どうしたと思う」
「みんなって?」
「ここを出ていった人たち」
「ああ」

グレーのスクールバッグを開き、中に向かって話しかけると、眠たそうな返事が帰ってくる。

「眠っていたの」
「少しね」

夕子はそう言うと、もぞもぞとカバンの奥に潜り込む。首だけで器用に動くものだと毎度感心する。
貴重な話し相手は眠ってしまったし、爪の甘皮もすべて剥いてしまった。
髪の毛も完璧にセットし終えたし、化粧などはもう6度ほど仕上げては落とすのを繰り返していた。

再び腕時計に目をやる。
この電車が停止してから約5時間30分。
開け放された扉からは、すでに約8割の乗客が逃げ出している。

「寒いなあ。ねえ夕子」

返事はない。

「どこに逃げたって同じなのにね」

そう言って、ゆっくりと目を閉じた。
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