お題:禁断の父 制限時間:15分 読者:29 人 文字数:1027字

魔王の娘?
「この地に封印されているのは、わたしの父なんです!」
 禁断の地と呼ばれる古い神殿の跡地で、勇者ブレストに相対した少女は涙ながらにそう叫んだ。
「ならば君は――」
 ブレストの拳に力が入る。
 この禁断の地は「魔王封印の地」であった。1000年前に地上を平らげんと企んだ魔王を、往時の勇者が封印したといういわくつきの土地だ。
 ここにブレストがやってきたのは、その1000年前の魔王が封印の奥から現世に悪影響を及ぼし、魔物の動きを活発化させているためだった。1000年もの時を経て封印が緩み始めているのでは、とブレストを派遣した賢者カーチスは推測し、彼に再封印を施すようにと命じていた。
 そうしてやってきたブレストを、この禁断の地に案内してくれたのが、今相対する少女プラムだった。禁断の地近くの村に住む彼女は、森で薬草を採って生活をしており、この廃神殿周辺の地理にも詳しいということで、ガイドを買って出てくれたのだが……。
「そうです、わたしの父は」
 その先は言葉にならなかった。涙を流す彼女に、ブレストはその1000年の孤独を思った。
 だが、そうだとしても。俺は勇者の使命を果たさねばならない。
「――再封印を行う」
 勇者は剣に手をかけた。この聖なる剣に祝詞を唱えれば、禁断の地の封印は強固さを取り戻し、向こう300年は持つだろう、というのが賢者カーチスの見解であった。
「ダメです!」
 プラムは勇者の腕にすがりつく。
「そんなことをしたら、父は――」
「離してくれプラム!」
 勇者は少女を振りほどくと剣を抜き放った。白刃の閃きを、プラムは怯んだ顔で見上げた。
「ここで魔王の封印を強めなければ、いずれまた暗黒の時代がやってくる。君には、それは暗黒の時代でなかったかもしれないが、この世界に住む数多の命は魔王の世では生きていけない――」
 魔物は命ある者に有害な瘴気を発する。魔王ともなれば、その瘴気の量は凄まじい。魔王がいるだけですべての植物は枯れ、水は腐り、動物たちも弱っていくのだ。
「そんな、暗黒の時代なんて――。そんなの、ただの木こりである父に起こせるわけ……」
「え、魔王は木こりだったのか?」
 ブレストは目を丸くする。同時に、プラムも怪訝な顔を浮かべた。
「魔王? 何を言ってるんですか、勇者さま。魔王はもう封印を抜けましたよ」
「……は?」
 プラムがいうには、魔王は入れ替わりの術を使って封印を数日前に抜け出したという。
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