お題:鳥の帰り道 制限時間:15分 読者:41 人 文字数:919字

鳥が先か
 動物なんて好きでもなんでもなかったが、ある日帰り道に見かけた木の巣箱に心を奪われて以来、鳥を庭に呼び込みたくて仕方なくなった。餌を用意して毎日野生の鳥を世話したい、というのはただの口実で、実際は巣箱を設置したい願望が先だった。ミニチュアの家のような、屋根のついた、小さな巣箱。鳥が内部の餌をついばめるよう、側面には穴が空いている。小さなフォルムといい、手作り感満載の温かみある造りといい、いつまででも眺めていられる。
「まるで鳥屋敷だな」
 むかしは野良猫を追い払うためペットボトルを積み上げて要塞のようだったのに、とあまりの変わりように、久しぶりに家を訪れた友人は驚いた。庭に次から次へと到来する鳥のために餌の補充に忙しく、友人に茶を出す暇もない。期待していない、というように友人はリュックサックから持参した茶を取り出して飲んだ。
「まあ、鳥と猫は天敵ともいうし、お前は動物嫌いでなく猫嫌いだったのかもな」
「勘違いがあるようだが」
 餌の補充が終わったら次は、今ある巣箱の補修と新しい巣箱の製作に取り掛かる。巣箱の魅力に取り憑かれてからというもの、目の回る忙しさだ。「鳥なんか好きじゃないよ。フンでせっかく作った巣箱を汚されるし」
 友人は茶菓子までは準備がなかったらしく、勝手に棚を漁ってクッキーの箱を見つけ出した。開けかけの袋を取り出して中を覗き込む。
「鳥にはすごくなつかれてるようなのに」
「やつら、勝手に寄ってくるんだ。迷惑だよ。巣箱があるとやってくるんだから、期待されたら餌を用意するしかないだろう」
「世話したいって言ってなかったか」
「どっちが先だったかなんて、もう忘れた。忙しすぎるんだ。巣箱を設置するのに広い庭が必要だから、引っ越しまでしなきゃならなかったし」
「そうだ、忘れてた。引越し祝いがあったんだ」
 一口味見して、クッキー箱の中身が鳥の餌であることに気づいて吐き出してから、友人はリュックサックからなにかとてつもなく心惹かれるものをとりだした。
「はい、鳩時計。こういうの好きだろ」
 まさに、ミニチュアの家のような、屋根のついた……これこそ求めていたものだったと、鳩時計収集家に転向することを決めた。
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