お題:アブノーマルな多数派 制限時間:15分 読者:31 人 文字数:855字

あのさあ・・・ ※未完
「我々は幸せです」

 今朝、そんなことを不意に話し掛けられた。

 名前も、顔も知らない。どちらかというとため息の似合うおっさんは、続けてわたしに言ってくる。

「世界中で、昨日死んだ人の数をご存知ですか?」

「いいえ」

 すぐにでも学校へと向かいたい。はやく行って、話して、あと眠りたい。

「では、この街で死んだ”人”の数は?」

「……もう、いいですか」

 拒絶に対して、男の表情が変わった。

「これも、ご存じないのですか」

「知ってはいるけど」

「では何人ですか」

「……ゼロ」


 昨日は、いつも通り誰も死んでいなかった。

 私が死んでいない。それが何よりの証拠であり、またこの男がこんな質問をしてくるのも確かな根拠。

 死なない街で、私たちは幸福に暮らす。


「もう一つ、質問を」

「なんでもいいから早くしてね」

 これ以上、私は遅れたくなかった。そしてこの不潔な男もまたそれを認識しているようで、すこし早口になって問を告げた。

「あなたは幸福ですか?」

「……幸福よ?」

 なんでそんなことを。そんなもの、当たり前に決まっていることだというのに。

 アスファルトに細かく踵をぶつけながら私は聞き返した。

「あなただって幸せでしょ?」

「ええ。幸福です」

 じゃあ本当に、なんで聞いたのか。__思い当たる節があるとすれば、彼が私とは違う”生き方”をしているか、もしくはそもそも、この街の人間でないとか。

 どちらもあり得なくて、笑ってしまうけど。

「ま、幸福ならいいわ」

「その通りですよ。もちろんです」

「それじゃあもういい?」

「ええ。すみませんね。……あなたの”予定”を狂わせてしまうところだった」

「本当に、ね」

 もしも”予定”がくるったら、私は一体どうなっていたのだろうか。学校へと向かいながら考えてみる。

 ここは幸福の街で、それでここにいるのは幸福に生き、幸福に生きられる人々と、それから。

 わたしはしにんになって

 
作者にコメント

似た条件の即興小説


ユーザーアイコン
作者:にい お題:阿修羅湖 制限時間:15分 読者:9 人 文字数:873字
ふと思い立って湖に身を投げたところ、ひとりきりと思った水中に先客がいた。悪鬼そのものといった顔をして、ひどく怒っている様子である。さては、夕涼みに水浴びでもし 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
夏の後悔(真) ※未完
作者:匿名さん お題:危ない嘔吐 制限時間:15分 読者:4 人 文字数:183字
限界だ真底限界だ。そもそも乗り物酔いが酷いのに、なぜ僕は車に乗ってしまったのか。この車は海に向かうという。いいじゃないか白い砂浜・青い海・そして水着美女とのアバ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:茂吉 お題:危ない嘔吐 制限時間:15分 読者:12 人 文字数:519字
酒を飲みすぎて吐く。そんなのは全然危なくはない。周りに迷惑がかかるぐらいのことだ。胃の中に異物が入ったから吐き出す。生物としての生理現象に過ぎないだろう。人間 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
薔薇 ※未完
作者:匿名さん お題:美しい薔薇 制限時間:15分 読者:6 人 文字数:483字
才能があるということは罪だ。思春期真っ盛り、いつものように自転車を漕ぐ僕は、14歳の夏にそう思ったのを覚えてる。才能があるばかりに、それをしなくてはいけない。才 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:前田 お題:バイオ目 制限時間:15分 読者:11 人 文字数:512字
ついに発見された遺体は金色の目玉で、捜索隊は「はて、これは本当に人間だったのかしら」と訝しんだ。その疑惑は隊員の思惑から完全に外れた位置において的中していた。 〈続きを読む〉


ユーザーアイコン
死神の目 ※未完
作者:もき お題:バイオ目 制限時間:15分 読者:14 人 文字数:684字
少しでも指が目元に触れたり、意識的に目のことを考えると私は心のどこかから今まで経験したことのない、不安のような、ざわめきのようなものを感じることが多くなった。 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:にぼし(ヌケガラ) お題:今の俺 制限時間:15分 読者:7 人 文字数:533字
もう残った時間は少ない。この本の余白を使いここから脱出することについての考察を書いていく。直接脱出する為に必要なことは書いていない。あくまで三日三晩さ迷い続け 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:日ノ宮理李@ばに普及化 お題:激しいドロドロ 制限時間:15分 読者:12 人 文字数:940字
ドロドロとした液体が足元を流れてた。 触ってみると粘り強く鼻をつく臭いがする。 色は白、まるでとろろのようだ。「……?」 その元となったものを見ると、疑問しか 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:雨宮ヤスミ お題:穢された耳 制限時間:15分 読者:14 人 文字数:1159字
地下アイドル「ぶっこみ★ガールズ」は、大体20歳前後の女の子五人組でコアな人気があった。 天然で変なところで度胸のあるユミ、姉系でみんなのまとめ役のルネ、妹タ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:ダツ・ Ambrose お題:今年の弁当 制限時間:15分 読者:11 人 文字数:1226字
「両親が海外勤務になって高校三年間を一人暮らしする羽目になったライトノベルの主人公みたいな男って、ハーレム築くよりも、猟奇的な事件を起こしそうなんだけれども、そ 〈続きを読む〉

なたねの即興 小説


ユーザーアイコン
作者:なたね お題:オチは解散 制限時間:15分 読者:25 人 文字数:859字
「おい、生きてるか!」 死人に口なし、どうやってそれにNOと答えるのだろうか。あきらかに動揺した目の前の男は、私の身体を乱暴にゆすった。腕が細いくせに、なんか妙 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:なたね お題:同性愛のドロドロ 制限時間:15分 読者:32 人 文字数:599字
目覚めたとたん、巨大な肉の塊が私の目元に落ちてきた。 塊は大きく揺れながら私の肌に触れる直前に止まって、ちょうど彼女は私に大きかぶさった形となった。「よお」 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
少年 ※未完
作者:なたね お題:少年の兄 制限時間:15分 読者:26 人 文字数:692字
「おじちゃん、もうおしごといっちゃうの?」 頷いた私にぎこちない笑みを返して、それから少年は言った。「きょうはね、僕のおかあさんが会いに来てくれるんだって。おか 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:なたね お題:オチは痛み 制限時間:15分 読者:27 人 文字数:555字
私が楽屋へ向かった時に話し掛けてきたのは、同期で売れっ子の作家、サメ次郎だった。「売れてるか」「……おかげさまで」 昨年までにこんなことを言われていたら、まち 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:なたね お題:調和した洞窟 制限時間:15分 読者:33 人 文字数:860字
僕はある日、ちくわのなかを見てしまったことがある。 空っぽだった。磯臭い空気と共に向こうで動く兄弟が妙にちっぽけに見えて。 海原というよりは、ため池のように虚 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:なたね お題:アブノーマルな多数派 制限時間:15分 読者:31 人 文字数:855字
「我々は幸せです」 今朝、そんなことを不意に話し掛けられた。 名前も、顔も知らない。どちらかというとため息の似合うおっさんは、続けてわたしに言ってくる。「世界中 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:なたね お題:名付けるならばそれは会話 制限時間:15分 読者:50 人 文字数:700字
「330、起きているかい。330」 入ってすぐにかけた一声に、今日もそれは答えてくれた。 人形。 肉と骨を持った、無魂の人型。「__スリー、スリー、ゼロ」 空気 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
※未完
作者:なたね お題:見憶えのあるフォロワー 制限時間:15分 読者:30 人 文字数:560字
「初めまして、ですよね」 電話の向こう、その日最後の相談者は、いかにも若い、まだハリのある声を持つ青年だった。「はじめまして、……えーと、ごめん。なんて読むのか 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:なたね お題:黄金の孤独 制限時間:15分 読者:29 人 文字数:622字
囲まれている。 人。夢、金、愛。 私は今、この世のすべてに囲まれている。「腹が減ったな」 瞬間、腹が満たされた。 私は、全てに囲まれている。かこまれて、何もか 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:なたね お題:地獄銀行 制限時間:15分 読者:55 人 文字数:910字
男が差し出したその箱は、いかにもな生臭さを発してカウンターに載せられていた。「あのー。……お客様?」 私が彼と向かい合うように立っているのだから、それを言うの 〈続きを読む〉