お題:アブノーマルな多数派 制限時間:15分 読者:21 人 文字数:855字

あのさあ・・・ ※未完
「我々は幸せです」

 今朝、そんなことを不意に話し掛けられた。

 名前も、顔も知らない。どちらかというとため息の似合うおっさんは、続けてわたしに言ってくる。

「世界中で、昨日死んだ人の数をご存知ですか?」

「いいえ」

 すぐにでも学校へと向かいたい。はやく行って、話して、あと眠りたい。

「では、この街で死んだ”人”の数は?」

「……もう、いいですか」

 拒絶に対して、男の表情が変わった。

「これも、ご存じないのですか」

「知ってはいるけど」

「では何人ですか」

「……ゼロ」


 昨日は、いつも通り誰も死んでいなかった。

 私が死んでいない。それが何よりの証拠であり、またこの男がこんな質問をしてくるのも確かな根拠。

 死なない街で、私たちは幸福に暮らす。


「もう一つ、質問を」

「なんでもいいから早くしてね」

 これ以上、私は遅れたくなかった。そしてこの不潔な男もまたそれを認識しているようで、すこし早口になって問を告げた。

「あなたは幸福ですか?」

「……幸福よ?」

 なんでそんなことを。そんなもの、当たり前に決まっていることだというのに。

 アスファルトに細かく踵をぶつけながら私は聞き返した。

「あなただって幸せでしょ?」

「ええ。幸福です」

 じゃあ本当に、なんで聞いたのか。__思い当たる節があるとすれば、彼が私とは違う”生き方”をしているか、もしくはそもそも、この街の人間でないとか。

 どちらもあり得なくて、笑ってしまうけど。

「ま、幸福ならいいわ」

「その通りですよ。もちろんです」

「それじゃあもういい?」

「ええ。すみませんね。……あなたの”予定”を狂わせてしまうところだった」

「本当に、ね」

 もしも”予定”がくるったら、私は一体どうなっていたのだろうか。学校へと向かいながら考えてみる。

 ここは幸福の街で、それでここにいるのは幸福に生き、幸福に生きられる人々と、それから。

 わたしはしにんになって

 
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