お題:綺麗な机 必須要素:ケチャップ 制限時間:4時間 読者:11 人 文字数:1674字
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(習作)部屋
 気が付くと、真っ白な部屋に私はたたずんでいた。

 おもわず自分の手を見る。
左手に割れたケチャップの瓶。赤い液体まみれの服。
空いた右手で顔を撫でまわすとこれまたべっとりとまとわりつく。
どうも飛び散ったケチャップをもろにかぶっていたようだ。

 自分の手をもう一度見て、そして噴き出した。
テレビや映画で登場人物が死んで復活したりして手を見るシーンをクサイ演出だと常々笑っていたのが、今になって当の自分が無意識にとっているのだ。
理解した。つまりこれは自分の存在を確認するのに必要な行為なのだ。
家に帰ったらテレビを見るたびに懺悔することにしよう。「監督!あんたの演出は本当に正しかったんだ!」と。

 改めて部屋を見回す。
真っ白だ。
無菌室とも違った、床、壁共に漆喰とも分厚い塗料ともつかないもので塗り固められた、外国の写真に出てきそうな真っ白な部屋。どこか暖かみというか安心感を感じる。
そこにぽつりと、これまた真っ白な、机。こちらは北欧の家具にありそうな、よく言えばミニマリズムを体現したような、悪く言えば簡素極まりない、机だ。

 4歩歩いて、机の前に立つ。
簡素極まりない机。そう感じていた私の感覚を、この机は突然裏切り始めた。
見れば見るほど、なんというか、綺麗な机だ。木から切り出したのでも金属やプラスチックを成型したのでもなく、初めからそういう形で存在したかのようなおさまりの良さ。1つの個体として完成されているといってもいい。見れば見るほど自分の中に感謝と歓喜が渦巻く。
不思議だ。たかが机に。

思わず机に手をついて、頬ずりをした。そして後悔をした。
白い机に赤い跡が走る。咄嗟に服で拭う。赤い跡は拡散し、机全体に広がった。
恋人に怪我をさせてしまった男のように私は後ずさり、壁にもたれかかった。
壁にべっとりと赤い跡。後ずさり尻もちをつく。転がったケチャップの瓶を掴み、指先から血が出る。
滴った血液床を汚す。
壁が。床が。机が。白が赤に浸食されていく。
輪郭が鮮明になり、生物的ですらあった机はただの『モノ』となってしまった。
暖かみのあった白壁は汚れたそれに。潔癖であった床は私の血でそれを失ってしまった。
私という『異物』がこの部屋と机を侵食し、完結性を崩壊させてしまったのだ。

私は跪き、泣いた。
どれくらい泣いただろうか。立ち上がり、机に右手を置く。
赤と白のまだら。それをさらに手で拡げ、机全体を薄赤く色づけた。
奇妙な感覚が襲ってきたのだ。
子供の頃に大事にしていた人形を壊してしまった時、思わずばらばらにしてしまったような。
失われたものを確認するような、むしろ自分から完全に壊してしまいたいという欲求。
机の面から足へ、そして裏面へ『赤』を塗り広げる。
戦争ゲームの侵略のように。
そして「それ」は完成した。赤い机。完璧だ。

完全性を取り戻すカギは手の内にあったのだ。
そう確信した私は壁を床を赤く、赤く塗っていく。
瓶を振りケチャップをまき散らし懸命に塗り込む。
赤く。赤く。赤く。
瓶のケチャップはなくなり、自分の手や服や顔についたそれを使う。
赤く。赤く。赤く。
ようやく部屋全体が薄赤く染まり、私は達成感と共に大の字に横になり、そして、文字通り、仰天した。

真っ白な、天井。

 足りない。赤が足りない。完全たりえない。
何かないか。赤はないか。
答えは簡単だった。瓶の破片。私の手の傷。

 天井を塗り終え机から降りた私は歓喜と共に横たわる。
指から血が出なくなったら手。次は腕。赤が足りないのはダメだ。
足。脚。腿。もっと赤が必要だ。
腹。そして行き着いた。首だ。

すべてが赤くなり、そして青くなり、暗くなった。

==================================
「対象の心肺停止を確認。」
「うむ。実験を終了する。」
「しかし所長、これが今までの死刑に変わる方式には思えませんが…」
「それは政府が決める事だ。清掃の後次の被験者を搬入せよ。」
(了)
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