お題:謎の夜風 制限時間:15分 読者:27 人 文字数:776字

理由。
 喧嘩した。
 親と喧嘩した。
 他人からしてみたら、些細なことかもしれないけれども、それでもお互いに振り上げた拳を抑えられなかった。

 だから、家出した。私にとってこんな時間まで外出をすることなんて、一度も無かった。それくらいの、関係性だった。
 縛られている? わからない。だけども、こうしてこの時間に外に出ていたから、夜風に当たるのがそこまで気持ち良いわけではないということがわかった。

「だから、こうして僕の家に来たってことだね」
「……うるさい」
 今の季節でも夜は寒いということも初めて知った。それを知ってから遠出をする気にはもちろんなれなかった。知らない人の家に行くことも考えたけれども、私にはそんな勇気が無かった。

「兄さんは黙って私を泊めたら良いんですよ」
「はい、はい」
 ハイは一回。なんてことを兄がまだ家にいた時、母はそう言い聞かせていた。兄さんはそれを言われるとどこか嬉しそうにハイと言い直していた。

「母さんには連絡しておくから、今日はゆっくりしていっていいよ」
「……」
 私は黙って首を縦に振った。これは、なににたいしての感謝なのかわからなかった。

 こうして母から逃げるように、一人暮らしをしている兄の元へやってきた。五歳離れた兄は高校を卒業すると同時に家から出て一人で暮らすようになった。
 私からしてみれば、不思議でしょうがないことだった。だって兄さんがお母さんお父さんと喧嘩している姿なんてみたことがなかったから。
 こうして家から一人減って、妹と、その下の弟と妹たち、そして両親で暮らすようになって一年の間、お母さんは私に過干渉になっていった。
 どうしてなのかはわからない。急に私しかいなくなったから?
 今日ここに来たのは、もちろん喧嘩したからでけれども、兄がここにいる理由も知りたかった。から。
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