お題:冷静と情熱の間にあるのは想い 制限時間:15分 読者:32 人 文字数:921字

普通ではない
 家族を失った人間に、かける言葉はみんな同じ。可哀想に、これから大変だ、ご愁傷様です、困ったことがあったら連絡して。今日の通夜でこの言葉を何度も耳にした。
 それが普通、なのかどうかはわからない。父、母、姉、兄。いっぺんに六人もの家族がいなくなってしまったのだ。
 どうして私だけが生き残ってしまったのか、それはただただその日に限って家に帰ってくるのが遅かったから。それ以外のなにものでも無い。もしあの日外に出掛けていなければ、私もこの葬式に参加していなかっただろう。
 幸いなことに、家族はそれなりに遺産を残してくれいるらしい。それでいて祖父母や伯母さん、従姉妹がこの葬儀やらの準備をたくさん手伝ってくれていた。このことがなによりも嬉しかった。
 このあと私は伯父や従兄弟の家にお世話になるのであろう。そんなことを考えていたら、通夜も告別式も終わっていた。
 やっと落ち着ける日がやってきた。だけども今度は伯母と従兄弟の家に引っ越すための準備をしなければならない。とは言うものの、この家は伯母さん(正確には血が繋がっていない伯父さん)が売り払わずにいてくれるらしく、別にいつでも自由に出入りできるのだ。
 ただやはり私はまだ中学三年生と高校一年生の間だから、保護者がいなければ色々と都合の悪いのも事実。だから伯母さん達の好意には素直に甘える。

「おっすー」
「あ、不良教師」
 そうして家の片付けやらをしていたら、その従姉妹がやってきた。不良教師というのは従兄弟が最初に言ったらしい。当人もそれが気に入っているのがあの姉弟の謎めいた部分ではある。

「どう、慣れた?」
 ソファーにリラックスしながら、従姉妹は平然と笑顔でそう言った。
「慣れて、いいのかな」
 私がどんな顔をしたのかわからないけれども、思ったことをそのまま口にしてみることにした。
「別に良いんじゃない? まあアイツなら『良い人のフリなんて誰でも出来るんだから、そのフリはしておけ』って言うけどね」
「ハハハ」
 久しぶりに笑うことが出来た。

「だってさあ、ねえ、あんだけ色々ガミガミ言われて、嫌がらせされている奴らがねえ」
「そうですよね」
 私はもう普通ではない。
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