お題:近い窓 制限時間:15分 読者:13 人 文字数:1226字

内と外
白い一室。

中にあるのは、椅子と机。

それから、小さな窓。

上を見れば、一面に正方形が連なっていて、壁を見れば白で埋め尽くされている。

この部屋に、2つだけ違う色がある。

一つは私。

私は人間なのだから、白い色はしていない。

部屋の中にある鏡が、それを表すなによりの証拠だ。

もう一つは、窓。

この二つ以外、みんな真っ白だ。

まるで、隔離されているみたいに。

全てを消してしまうかのように。

それでも、私は思う。

ここにいることが、私にとって天命であり、運命なのだから。

争うというのは酷なものだ。

けれども、つまらないのも事実。

毎日毎日、白い部屋の中を見続けることも飽きた。

だけど、わたしにはこの部屋の外の記憶が無い。

もちろん、知識として外があるのは知っている。

だけど、出る手段が無いのだから、考えてもしょうがない。

窓があると言っても、格子に阻まれているから、出ることは難しい。

食事は、一定の時間が経つと、空から降ってくる。

その奥を除いても、ダクトの中すら真っ白だ。

この部屋で生きる意味はなんだろう。

自分に問いかける。

まるで答えを探すかのように。

あるいは、死地を見つけるかのように。

ここでの生活に少しだけなれた。

いえ、慣れてはいけないのだろうけれど。

だから、私は考える事にした。

外の世界がどうなっているのか。

きっと、様々な色で溢れている。

時折、窓の外が赤く光っているから、色があることが確信できる。

でも、誰が何のために、私をここに閉じ込めたのだろう。

前の記憶がないというのも、存外不便なものだ。

この部屋でできることは限られている。

椅子に座るか、ベットに寝るか、ご飯を食べるか、身体を洗うか。

清潔に保つことができるこの部屋で、何不自由なく…というわけにはいかないが、ある程度の自由が保たれている部屋の中から外に出る必要はない。

けれど、と少し頭をあげる。

あの窓の向こう側に、何があるのか。

それだけを確かめたくて。

私は、椅子には座ること、ベッドには寝ることとしか考えなかったが、ベットと椅子を重ねれば、台になることがわかる。

ゆっくりと、壊れないようにその上にのり、手すりに手をかける。

恐る恐る、窓に顔を近づける。

その先にある景色に胸を躍らせながら。

あぁ、けれど。

けれども。

私の意欲を削ぐのに十分な光景がそこに広がっていた。

赤く光る色は、火災の色で。

黒くなるのは、焼け落ちたもので。

何かから私が隔離されている。

それだけが、唯一得られた情報だった。

私は、どうするべきだろうか。

手すりを壊し、窓の外に出るべきだろうか。

けれど、この部屋に慣れてしまった以上、外に出るのがものすごく怖い。

もしも、と考え始めると、私は生きていられようか。

その答えは、未だ窓の中にある。


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