お題:無意識の酒 制限時間:15分 読者:22 人 文字数:832字

断酒会 ※未完
「おかえりなさいあなた!」
 病院から帰ってきた私を、妻は熱烈なハグで出迎えた。こんなの、新婚以来だ。すっかり舞い上がってしまって、新婚からはだいぶ体重の増した妻を抱きしめたまま、その場でぐるぐる回った。すぐに腰にきてやめたが、頬の上気した妻からは、喜んでもらえたことが窺える。
「今日は退院記念パーティーなの。子供たちと、近所の人も呼んで……」
「なんだって、聞いてないぞ」
「……駄目だったかしら?」
「とんでもない。むしろ嬉しいサプライズだ」
 妻だって私を喜ばせようと企画したのだ。パーティー。いい響きだ。入院前の私はみんなで集まって飲み食いするのがなにより好きだった。
 数年ぶりに会う子供たちはりっぱに成長していて、一番うえの子などは孫まで連れてきた。近所に住む、十年来の親友ともひさしぶりに心から語り合えた。庭をめいいっぱい広く使って、テーブルには奥方たちが腕によりをかけた料理が並んだ。美味い料理に、親しい人々との会話。妻が退院祝いに贈ってくれたのは、最高のひとときだった。
「これで酒があればなあ」
 気が緩んだのか、十年来の親友がその一言を口に出すまでは。
 普段から声のでかい親友がうっかり放った禁句は、庭に響き渡り、その場の空気を凍らせた。私は笑みを顔に張り付かせたまま、みんなが持ったグラスの中身に無意識に視線を向けていた。無色透明の水。私が飲んでいるのと変わらない。
 私のために用意された飲み物に、みんなが合わせてくれているのだ。
「気づかなかったな、みんな、そこまでしてくれなくてもいいのに」
「でも、あなた……」
「いいんだよ、私に構わずみんなは飲んでくれて。私は酒を絶った。二度と飲まないと病院で誓った。もう君に迷惑をかけたくないからね」
 私が精一杯の虚勢で言った台詞を真に受けて、「じゃあ……」と言いかけた親友を彼の妻が殴って止めた。
「平気なのに、大丈夫だ、酒なんて二度と……」
「お酒を飲んでるあなたは嫌いよ」
 つ
 
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