お題:最弱の妄想 必須要素:パーカー 制限時間:1時間 読者:55 人 文字数:2863字 評価:2人

ギフテッドってそういうことじゃないな
研究者である父母が実験で起こった事故で死んで、自分もその現場にいたけども、生き残った。
みたいな話であると、ギフテッドになる。よくなる。世間的に。実験の途中で実験に巻き込まれる。そういうのがギフテッドになる。ちなみにギフテッドっていう言葉はつい一週間前に知った。そういう言葉あるんだーって思って。早速使う。そういうところが俄であるように思う。

私の両親もそういう感じで死んだ。しかし私自身はその場にいなかったからなのか、ギフテッドにはならなかった。両親の死は私自身死ぬほど悲しかったけども、それは後天的な話である。両親が死んだとき私は幼かった。とても幼かった。赤子に毛が生えた程度の感じだった。だから私自身に両親の記憶はない。写真で見るだけである。

「あなたの両親はゴ●ラを止めるために研究を行って、その途中で死んでしまったの。とても勇敢な人たちなのよ」
祖母はそういって幼いころから私を慰めたが、後々違う人などに聞いてみると、それは少し違うようであった。
「両親はゴ●ラを止めるための研究をしていた。それはそう。でも、その成果も得られないまま、死んでしまったんだ」
それを聞いて、悲しい気持ちがあったけども、でもまあ確かにそうだろうなという思いがあった。

あのどでかい怪物を止めるだなんて。

どうしてそんなことを仕事に選んだのか知らない。名誉なことなのか優秀なことなのかも知らない。しかしいくら優秀でもあんなでかいのをなんとかしようだなんておかしい。そんなの絶対におかしい。所帯を持つ人がやることじゃない。特に幼い子供を抱えている人がやることじゃない。そんなのは独身者がやるべきだと思う。おかげで私のような両親ともにゴ●ラ案件で死んでしまった子供ができてしまった。両親もいない。ギフテッドもない。
「どう思うね?」
そういう話を知り合いのパーカーにした。パーカーはパーカーを着ているからパーカーと呼んでいる。奴はいつもパーカーだ。ピゾフのパーカーを着ている。
「僕もあるよ」
パーカーがしゃべると腹部の猫がしゃべっているように見える。
「ある?」
「子供のころ、両親やら姉やらが、あまりにもナウシカを見ていたせいでね」
パーカーは幼いころにあまりにもナウシカを見すぎて、もう泣けなくなってしまったんだという。あまりにも見すぎて。多少の感情やらを得る前にあまりにも見すぎて、それでもう泣けないんだと。もう少し大人になってから見てたらきっと泣けてるだろうになあ。
そんな話を延々としていて、
「そんな話してるんじゃないバカ!」
ってパーカーの膝頭をグーでガンガンやってから帰った。
「明日も迎えに来るからね。学校さぼらないでね」
パーカーが後ろから声をかけてきたが、それにも当然応じなかった。

「・・・」
自分の部屋の机には一応両親の写真を飾っている。二人して並んで笑っている写真だ。写真立ては私が小学校の図工で作った手作りのやつだ。写真の中の母は幼い、毛も生えていない頃の私を腕に抱いている。二人とも何もなさなかったのに、とても笑っている。
「・・・二人の仇とるからさ、今からでもギフテッドちょうだいよ」
黙ってみているとつらくなってくるから、写真立てを倒してベッドに横になった。

「うあー・・・」
なんとなく安心したくて声を出す。時たまあるやつだ。これからどうなるんだろう?私どうなってしまうんだろう?どうやって生きていったらいいんだろう?どういう感じになるんだろう?そういうのがどわって押し寄せてきて心がざわざわする。祖母にも話したことがない私の秘密。不安感が殺しに来るやつ。

「現場には火炎放射の跡があった」
「両親の遺体を確認しました」
「実験は失敗だったようです」
「あなたのご両親は勇敢でした」
「ご両親は国のために戦われた」

ざわざわする。心にざわざわが広がっていく。やめて。やめてよ。誰かに止めてもらいたい。目を瞑っても開けてても、記憶が押し寄せてくる。やめてよ。とめてよ。

うううううううううう

そんな中、警報が、サイレンがなった。
カーテンを閉めたままでも窓の外が赤くなったのが分かった。カーテンを開けると案の定、都心のほうの空が赤くなっている。

ゴ●ラだ。奴が出たんだ。

私は何も考えず外に飛び出していた。

自転車で三十分、私は都心に向けて自転車をこいでいた。ゴ●ラにあってどうするのか?何をするつもりなのか?どうしたいのか?復讐したいのか?どうやって復讐するのか?何をしたいのか?何一つ決まっていない。何もわからない。それでも無我夢中で走っていた。

そうしてちょうど十七号線と荒川のぶつかるところで、ゴ●ラの進行方向の正面に立った。
「くそ野郎・・・」
お前のせいで、私の人生はめちゃくちゃだ。どうしてくれるんだこの野郎。馬鹿野郎。死ねこの野郎。他はどうなったっていい。別にいいよ。なんでもいい。どこ壊したって別に構わない。でも私の両親殺しやがって、私はどうすればいいんだ馬鹿野郎。くそ野郎。

道の向こう、ビルの間、間にゴ●ラが見える。こちらに来る。間違いなく来る。
「だせこの野郎。出しやがれこの野郎!」
火炎放射だ、火炎放射を吐け。両親を殺した火炎放射だ。私はそれだ。それで死ぬ権利がある。私にはそれを喰らう権利がある。両親と一緒の死に方ができる権利がある。絶対にある。

「こっちだ。こっちだこの野郎」
ゴ●ラがこちらを見た。間違いなく見た。そうこっちだ。
「こっちだ!」
しかしその瞬間、奴は尻尾でビルを豆腐みたいに4、5本ぶっ壊した。そしてその破片が私の方に飛んできた。

ゴ●ラが壊したビルの破片、それが間違いなく飛んできた。私の方に。火炎放射じゃない。こんなの違う。でもそれで死ぬ。

もうあと少しで。

「ちがっ・・・」
目を瞑ったその瞬間、体に何かが絡みついて、恐ろしい力で引っ張られた。かろうじて宙を浮いてるような感じは分かったが、でもすぐに何もわからなくなった。

「うう・・・」
目を開けると、無事だったビルの上で蜘蛛のマスクの人に抱えられていた。
「スパイダーパーカーさん!」
スパイダーパーカー、千葉ットマンみたいなやつ。ご当地のやつ。最近ツイッターとかピクシブとかでパーカーちゃんが人気なので、そういうのが好きっていう経緯と好きすぎての誕生のやつだと思う。

「・・・」
スパイダーパーカーさんは、私が目を覚ましたのを確認すると、無理スンナってなんか変声期みたいな声で言うと、私を下ろしてどこかに行ってしまった。

ゴ●ラはすでにどこかに行ってしまっていた。パーカーさんはきっと人命救助に行ったんだろう。そういうことが素直にできるのはうらやましい。そう思った。

あと、ビルから向かいのビルにわたるときパーカーさんは、若干足をかばっていたように見えた。

なんとなく、膝頭をガンガンやったその後遺症に見える。

まあ、気のせいだろうけど。

作者にコメント

対戦作品一覧


ユーザーアイコン
作者:和委志千雅 お題:最弱の妄想 必須要素:パーカー 制限時間:1時間 読者:55 人 文字数:2863字 評価:2人
研究者である父母が実験で起こった事故で死んで、自分もその現場にいたけども、生き残った。みたいな話であると、ギフテッドになる。よくなる。世間的に。実験の途中で実験 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:にい お題:最弱の妄想 必須要素:パーカー 制限時間:1時間 読者:47 人 文字数:2555字 評価:2人
荷台の幌を開けると、内側に光が差し込んだ。みすぼらしい老人は、朝の光のなかで見ても変わらずみすぼらしい。一夜が経って、美女や美男に変化することもなく、ぼろをま 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:らび お題:最弱の妄想 必須要素:パーカー 制限時間:1時間 読者:41 人 文字数:1555字 評価:1人
僕のような典型的なナードにとって真夏の海ほど危険な場所はないわけだけれど、じいちゃんの店の手伝いを頼まれた以上、僕に逃れる術はない。ここで水着姿のクラスメート 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:雨宮ヤスミ お題:最弱の妄想 必須要素:パーカー 制限時間:1時間 読者:48 人 文字数:3277字 評価:1人
パーカーを着れば強くなれると思っているのは、昔見たアニメや仮面ライダーの影響かもしれない。 クローゼットを開くと、色とりどりのそれがずらりと並んでいる。僕はそ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:inout お題:最弱の妄想 必須要素:パーカー 制限時間:1時間 読者:43 人 文字数:2437字 評価:0人
真新しいパーカーは、着ぐるみを着込んでいるような気分になる。もの珍しいけど、ちょっと気恥ずかしい気分が残る。冬の寒さがまだ残る春先という季節は、どのような衣服を 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:びお~ら お題:最弱の妄想 必須要素:パーカー 制限時間:1時間 読者:42 人 文字数:1352字 評価:0人
今宵も眠らない街を征く。オーバーサイズのパーカーに身を包み、俯き気味にフードを被る。「さぁ、いこっか」視線を上げる必要は無い。繁華街の喧騒が身体に染み込み、秘め 〈続きを読む〉

和委志千雅の即興 小説


ユーザーアイコン
作者:和委志千雅 お題:僕の好きなブランド品 必須要素:ヨーヨー 制限時間:15分 読者:13 人 文字数:1032字
知り合いには、月に何万もブランド品とかにお金をかけている人がいて、そういう人たちからはよく、「アンタもなんかないの?」みたいなことを言われるが、私はない。「ドコ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:和委志千雅 お題:闇の動揺 必須要素:イケメン 制限時間:15分 読者:11 人 文字数:1038字
家の流し台の下の戸棚からドラえもん的なロボットが出てきた。マジか?とは思ったが、四次元ポケット的なマイバックを持っており、なんか試しに出してみてくださいって言っ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:和委志千雅 お題:夜の命日 必須要素:浦島太郎のストーリーを自分流にアレンジ 制限時間:15分 読者:14 人 文字数:999字
深海は暗いところだった。「どうされました?」昔来た竜宮城にもう一度行く機会を得て、二度目の再訪でそのことを知った。「ああ、これは乙姫様」「そのようにかしこまらず 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:和委志千雅 お題:静かな紳士 必須要素:二人称 制限時間:15分 読者:23 人 文字数:1198字
サンマルクコーヒーショップにコーヒーとタバコを吸いに行くと、その日の喫煙室は、とても空いていた。「おひょー!」ガッツポーズした。両手で。つい喜びを声と体で表現し 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:和委志千雅 お題:ゆるふわな喪失 必須要素:にゃんまげ 制限時間:15分 読者:12 人 文字数:988字
朝ホテルの朝食バイキングで今日は家族でユルフワナショッピングセンターに行くという話が出た。「今日は天気もいいし、ユルフワナだったら海も近いし、いいんじゃないかし 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:和委志千雅 お題:でかい大地 必須要素:武田鉄矢 制限時間:15分 読者:17 人 文字数:1072字
「これからデカイダイチを超えてもらいます」「なになになに?」目的地までどうやって行ったらいいですか?って聞いたら、なんかでかい大地とか言い出して、こわこわいこわ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:和委志千雅 お題:純白のモグラ 必須要素:SF 制限時間:15分 読者:12 人 文字数:857字
黒猫に横切られると不幸が訪れる的な話をよく聞くが、私の地元では純白のモグラに出会えたら幸運が舞い込むと言い伝えられており、「こんなことがあるんだ!」私はそのどち 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:和委志千雅 お題:大人の動揺 必須要素:う○こ 制限時間:15分 読者:21 人 文字数:1014字
う○こやおしっこを我慢している人というのは極端に余裕がない。「大人なのに!これじゃあ、大変なことになる」っていうのが顔に出ている。動きにも出てるし、汗とかにも出 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:和委志千雅 お題:人妻の靴 必須要素:ゴマ 制限時間:15分 読者:17 人 文字数:981字
うどんを茹てざるにあけ、水道水でぬめりを取り水を切って皿に盛り付ける。お椀を準備してそこにうどんつゆを注ぎ、氷水で二倍に薄め、あとはノリとかネギとかわさびとかそ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:和委志千雅 お題:危ない小説新人賞 必須要素:パンツ 制限時間:15分 読者:21 人 文字数:998字
ピ●シブで企画された危ない小説新人賞っていう企画に、「ビルの屋上から幼い子供をフェンスの外に放り投げる男の話」っていうショートショートを書いて送ったら、なんか一 〈続きを読む〉