お題:昨日の粉雪 制限時間:15分 読者:90 人 文字数:850字

雪の密室!のはずだったのに…
龍彦は不機嫌だった。
原因は昨日の午前中の積雪にあった。

季節外れの異常気象により、四月だというのに雪が降りに降って、ついには一面の銀世界を現出させた。
踏めばサクサク鳴る粉雪だった。

龍彦はかねてよりの計画に着手することを決意した。
屋敷の離れで資産家の叔父を殺し、雪の上に足跡を残さずに脱出する計画である。

叔父の遺産をゲットするためかねてから温めていたトリックがあった。
しかし肝心の雪が降る冬には、風邪をこじらせ高熱で寝込んでいた。
実行できなかった悔しさに悶々としていたところに、この時期を逸した雪である。
きっと天が自分を嘉しているのだ、と思い、彼はがぜんやる気になった。

計画は見事に成功した。
離れに呼び出した叔父を殺し自殺にみせかけ、自身は雪の上に足跡ひとつ残さず脱出したのである。
これで後でメイドか誰かが離れで叔父を発見すれば、そこへ行くまでの間に足跡がなかったことも同時に証言してくれ、晴れて自殺と目される…ミステリの定石ではそうなるはずである。

ところが彼の計画は思わぬところで破綻した。
異常気象により午前に雪を降らせた空は、これまた異常気象により午後からは真夏もかくやという暑さをもたらしたのだ。
積もった雪はあれよあれよという間に溶け、離れへの道もいつもと何の変哲もないコンクリートの地面に戻ってしまった。
当然、足跡などそこに残ろうはずもない…

叔父の死体は実に雪が溶けてからメイドに発見された。
足跡のトリックがなければ怪しさ満点のその死亡状況を、警察は苦も無く他殺と断定。
最も動機が濃い龍彦の犯行はすぐにばれ、お縄となった次第だった。

犯行が露見した悔しさよりも、さっさと溶けてしまった雪に恨みをぶつけたい気がする龍彦だった。
あれだけ苦心して考え挙げたトリックが、暴かれるどころか誰にも存在を知られることなく終わってしまうとは!

一体俺の苦労は何だったんだ…
左右の刑事には意味不明なつぶやきを漏らしながら、龍彦はパトカーで連行されていった。
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