お題:捨てられた風 必須要素:化粧水 制限時間:30分 読者:69 人 文字数:1178字

空の彼方・風の船(必須要素失念)
「いつか空の向こうへ行ってみたいんだ」

リアンがそう告げると、出会ったばかりの少女―確かシェーラとか名乗った―は不思議そうに首をかしげた。

「どうして、そんなところへ行きたいの?」

こう問われて、リアンはうれしくなった。
これまで彼の話に耳を傾けてくれた者はなく、村の大人達は「夢みたいなことを言う歳でもないだろう」と鼻で笑うだけだったのだ。

「だってこの空の向こうがどうなっているか、誰も知らないじゃないか。青い広がりの向こうには何が広がっているのか。星の光はどこからくるのか。それを知りたいんだ」
「知ってどうするの」
「知ってから考えるさ」

リアンは熱に浮かされた少年だった。
夢に向かう衝動だけが、少年の原動力だった。

「空の向こうへいっても、君は息ができずすぐ死んじゃうよ」

え、とリアンは不思議そうにシェーラをみた。
先ほど森の中で出会ったばかりの少女。
神秘的な緑色の瞳が、自分を映し出している。

「どうして…」

君がそんなことを知ってるんだ、と問う前に、別の応えが返ってきた。

「空の向こうの宙(そら)には、風がないもの」
「宙、それが空の向こうの名前…で、でも、なんで風がないんだよ。そんなこと信じられない」
「昔神様は世界をつくる時、4体の精霊にその仕事を任せたの。火と、水と、土と、風の精霊に」

話は思わぬ方向へ転がりだした。

「火と土の精霊は、互いに世界の主導権を握ろうと攻撃的だった。火は己の力を注ぎ込んで太陽を作り出し、土は幾つもの星を現出させた。一面が岩に覆われた、不毛の星を無数に」

リアンは少女のいう光景を想像しようとしたが、これまで彼がみてきたものからは到底連想できなかった。

「風と水は他の2体ほどの力を持たなかった。彼らの争いから逃れるように、星のひとつに身を潜めた。それがこの世界。だからこの星には命が生まれた。命は風と水がなければ誕生しないものなの」
「じゃ、じゃあ…人間が宙へいく方法はないってことか!?」
「あるわ、たったひとつだけ。それが風の船…」
「風の船!?」
「風の精霊の力に守られた宙を渡る船。それがあれば不毛の闇に覆われた宙を、泳いでいくことができる」
「それはどこにあるんだ!」
「本当にいいの?宙へあがれば荒れ狂う火と土の力があなたを襲うわ。生きて還れないかもしれない」
「かまうもんか!命をかけても、俺は飛んでみたい!お願いだ、風の船に案内してくれ」
「そう、それなら…」

少女の姿から突如粒子が流れ出し、やがて霧散した。
その後に突風とでもよぶべき強い風がリアンに吹き付けてきた。

「君は、まさか…」
「さあ、こっちよ。風に遅れないでね」

突風の中に、やさしいささやきが聞こえる。
リアンは髪をなぶられながら、風が―風の精霊が誘う方角へと走り出した。

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