お題:朝の作家デビュー 必須要素:火星 制限時間:30分 読者:41 人 文字数:850字

俺の同居人は作家デビューしたいとのたまう
火星に人類が降りたって、はや何年といった所だろうか。ここは土地ならいっぱいある。土地なら。おそらく地価を計算したらめっっちゃくちゃ安くなる。つーかここでは住むだけで金が貰える。家賃とかは勿論存在しない。ただし、裏を返せば、だ。「住めるもんなら住んでみろ。」という意味も含まれている訳で。…そもそも、人間が住める場所はまだまだ限られてるって事だ。つまり、俺が何が言いたいかっていうと。…俺は朝っぱらから時差ボケした挙げ句、『ボク、作家デビューしようかと思う!』とのたまうこの変人と好き好んでルームシェアしている訳じゃあないって事だ。
「…お前の職業って、何だっけ。」
「数学屋さん!」
同居人が変声期を何処かに置き忘れた声で即答する。まるで世界の常識だと言わんばかりに。驚く事なかれ、これでもコイツは世界でも5本の指に入る天才数学者なのだ。なんでも宇宙開発にはコイツの計算が必要不可欠なんだとか。
「何でその数学屋が作家になるんだよ。」
「何?逆にボクが作家になっちゃいけない理由とかある訳?」
…相変わらずコイツは面倒臭い。
「…そんなもんねぇけどよ。そもそもお前、文章とか書けんのか?」
「それが『一連の筋の通った文章を書けるのか。』と言う意味だったらYESだよ。公式の証明には必須だからね。そんでさ。一連の筋の通った文章が書けるんだったら、小説だって脚本だって書けると思うんだよねー。」
あんまりに堂々と言ってのけるので、正直俺は、返す言葉を失った。ここで『面白い話とか書けるのか?』と訪ねれば、コイツは『そもそも君にとっての面白いの定義って何?』って言ってくるヤツだ。コイツとの口喧嘩とは『不毛』の一言につきる。
「そうか、がんばれよ。」
「うん、解った!じゃあハヤサカ君は編集者お願いね!」
「は?」
「だってボクが作家になれるんだったらハヤサカ君だって編集者になれると思うんだよね!」
「お前、俺の職業…」
「エンジニア!」
…やっぱり面倒臭くても口喧嘩しとくべきだったかもしれない。
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