お題:自分の中の処刑人 制限時間:15分 読者:58 人 文字数:752字

俺の死神
(#134)

 自分の脳内には天使と悪魔が棲んでいて、様々な選択時に登場してはバトルを繰り広げている。
 そんな言い回しは腐るほど聞いていたのだけれど、まさか自分の場合がイレギュラーだとは思わなかった。
 僕の脳内にはただ一人、死神だけが棲んでいる。

 それに気付いたのはちょうど成人式の最中だった。
 僕の誕生日がたまたま成人式と同日だったこともあり、ダブルでおめでたいと周囲の人間たちは笑顔で囃したててくれた。僕もまんざらではない気持ちで鼻の穴を膨らませていたものだ。
 たくさんの新成人たちがひしめきあう市営の大ホールの中で、壇上の市長が祝辞を述べる声だけが響いている。
 うちの市は真面目な人間が多いのか、皆が口をつぐんで大人しく市長の有難いお言葉に耳を傾けていた。僕もその一人なのだった。
「良い子チャンぶってんのも俺にはバレバレなんだよ」
 ふと耳元で蔑むような罵声が聞こえた。
 僕の背筋がピンと伸びる。電流を流されたみたいにビビッと肉体が反射反応している。
 ……誰だ?
 心の中だけで冷や汗をかきながら、僕は眼球の動きだけで罵声の主を探した。
 けれど、一向にターゲットは絞れない。ジワジワとだが、皆が僕を蔑んでいるような気分にも襲われる。
 ……チッ、誰だよ!
 思わず出てしまった舌打ちに、隣の友人が驚いてこちらに顔を向ける。
 僕は辛うじて引きつった笑顔を返して取り繕おうと努力する。
「たった今、午前十一時ちょうどをもって、オマエは二十歳になった。よって、俺がオマエの脳内に派遣されることになった。オマエらの世界では死神って呼ばれてるそうだけれど“神ちゃん”という愛称で呼んでくれ」
 ヨロシクな、という軽い挨拶で締めくくった声。
 そこから奇妙な居候との暮らしが始まった。
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