お題:ねじれた恋愛 制限時間:30分 読者:8 人 文字数:1203字
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ある日の放課後
 隣の席の小林さんが好きだと気づいたのはついこの間のこと。そして彼女が僕の親友を好きだと知ったのは、たった今、つまりはこの瞬間だった。目の前で、彼女が僕の親友である秀雄に好意を打ち明けていた。
「好きです、付き合ってください。」
 恋愛小説、漫画、映画で何度繰り返されたかわからない台詞を、彼女はまっすぐに秀雄にぶつけていた。秀雄はというと、その整った顔に困惑を浮かべながら、頭を掻いた。
「あー。その気持ちはとても嬉しいんだけど、あいにく僕には好きな人がいるんだよ。」
「好きな人?」
 そう聞き返した彼女の可愛らしい声は、震えていた。二人は僕が立ち聞きしていることに気づいていないようだし、今すぐにこの場を立ち去りたいが、秀雄に好きな人がいるだなんて初耳だ。秀雄のことを親友だと思って、何でも秘密を話していた俺は、少し裏切られた気分だった。
「誰か、教えてもらってもいい?」
「勇気をだして告白してもらったんだ。それくらいの秘密を話すのは当然の義務だろう。ただ、誰にも話さないと約束してくれる?」
「もっ、もちろん。」
 彼女はいつの間にか、振られたことよりも秀雄の意中の相手が気になり始めているようだった。俺も同じだ。成績優秀、スポーツ万能、生徒だけでなく教師からの信頼も厚い優等生で、おまけにただそこに存在しているだけで目を引く、整った容姿の持ち主。そんな完璧を絵に描いたような、なぜ俺と親しいのか疑問なくらい人気者の秀雄が、誰にも言うことなく恋い焦がれていた相手が誰かなんて気にならないはずがない。
「僕の好きな人は、但野孝だよ。」
「但野くん?但野くんって秀雄くんと同じクラスで友達の……」
 彼女が戸惑うのも無理はない。実際、俺も我が耳を疑った。但野孝とはそう、俺のことである。紛れもなく秀雄の高校からの友人で、陸上部で、凡庸な男子生徒のことだ。
「……秀雄くんって男の人が好きなの?」
「そういう訳ではないと思うけど…ただ彼をひと目見て、運命の相手だと直感したんだ。」
「そう、なんだ……」
 彼女は驚きを通り越して放心状態に近くなっており、秀雄の話に相槌を打つだけで精一杯の様子だ。俺はというと、体中が熱くなるほど恥ずかしかった。多分、今の自分を鏡で見たら、全身真っ赤になっていることだろう。
「ただ、今までに築いた孝の親友という確固たる地位を壊したくはないんだ。まだ、彼に思いを打ち明けるのは早いと思っている。」
「そうなんだ。私、秀雄くんの恋を応援するよ。」
 こ、小林さん!?と思わず声に出しそうになったが、慌ててこらえた。二人の間には秘密を共有したからか信頼関係のようなものが生まれたように思える。
「ありがとう。いつか絶対に孝に好きになってもらうから。」
「頑張って!」
 僕は失恋したショックよりも、親友に恋心を抱かれていたという衝撃で、どんな顔をしていいのか分からなかった。
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