お題:やば、地獄 制限時間:15分 読者:15 人 文字数:1197字

ユイちゃんは地獄中
 ユイのことを時間にルーズな人間だとは思っていたが、まさか1時間も遅刻してくるなんて。
 と言っても、彼女に告白した時点である程度振り回されることは覚悟していたので、その時間も苦にならない。
 こんなの世界中で僕だけだからな。この待たされる時間が、「陰キャ」と蔑まされてきた僕が「陽キャ」の塊であるユイと付き合う男になるための準備期間になるのだ。
(え? 告白なん? ヤバ! 超ウケんだけど!)
 ギャハハハ、と笑って、だけどユイは「いいよ。てかヒマだし」とOKしてくれた。
 いささか軽いような気がするが、ともかく僕とユイは付き合っているのだ。
 きっと、多分。
 準備時間が長いせいで、僕も自信がなくなってきた。
 本当に、この初デート、ユイは来てくれるのだろうか。
 ここで無料通話アプリ「コーヒートーク」にメッセージが来る。「コーヒートーク」なんてイマイチマイナーだと思っていたのだが、ユイの周りでは普及しているらしく、僕もダウンロードさせられた。
 当然、ユイのアカウントしか知らないわけで……。

『やば、じごくだわ』
『ごめんね』

 僕は眉をひそめる。
 ユイのことを国語が苦手な人間だと思っていたが、まさか遅刻を「じごく」と打ち間違えるなんて。

『遅刻かな? 待ってるから、ゆっくりでいいよ』

 僕はそう返信した。

『鬼ヤバい』
『ウケる』

 地獄と来て鬼とはシャレが効いているが、ユイがそんな高等な言い回しをするはずはない。ただの偶然であろう。

『ぱんつめっちゃ派手』
『クソムキムキ』
『鬼ゴリラ』

 パンツ? 何故下着の話題を……。ギャルというのはそういう下品な生き物なのか……?

『じどりしたお』

 送られてきた写真を見て、僕は絶句した。
 ギャルピースをするユイの隣に、全身真っ赤で一本角を生やした、上裸で虎柄のパンツを履いたムキムキの、昔話に出てくる鬼としか言いようのないものが写っていた。
 そして、犬の鼻とヒゲをつけられていた。
 いや、待て。じごくって本当に地獄……? 鬼ヤバいはギャル語じゃなくて、地獄の鬼……?
 混乱する僕のスマホが震える。「コーヒートーク」にユイから着信だ。
「……も、もしもし」
『もしもし、すみません。今、大原ユイさんの電話からかけております』
 低い男の声だった。
「ど、どなたでしょう?」
『私、地獄の門担当の鬼ですが……』
「さ、さっきユイちゃんと写真撮ってた鬼ですか?」
『……そうです。あの、犬の鼻とヒゲを写真に描かれてしまった鬼です』
 恥ずかしそうだった。
『ユイさんなのですがね、交通事故に遭いまして、それで地獄に……』
「地獄なんですか?」
『総合的に見て、ギリギリ地獄ですね』
 電話口の向こうから、ウケるーと声がした。
『今回、完全に遅刻でしたが、あなたが許してくれれば……』
「許します!」
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